2022 Fiscal Year Research-status Report
強誘電体の電極界面付近の分極反転に伴う欠陥形成とその制御法
Project/Area Number |
22K04237
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
角嶋 邦之 東京工業大学, 工学院, 准教授 (50401568)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 強誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年に発見されたAlScN膜(0.1<x<0.46) の強誘電性は、高い残留分極(>140uC/cm2)と製造容易性の観点から将来の高集積・低消費電力用の強誘電体メモリ材料として期待できる。しかし、高いリーク電流と、強誘電体の分極反転回数(スイッチング回数)が10,000回程度と少ないことが直面する課題である。本研究はAlScN膜のリーク電流の主要因である窒素欠損を補償する技術を確立し、強電界印加によるスイッチングに伴う金属電極近傍のAlScN膜の原子挙動を明確化する。2022年度はAlScN膜にスイッチング回数を向上するために、抗電界を低減する技術を模索した。酸素を混入する検討を行った結果、抗電界を制御して低減できることを実験的に示した。酸素を導入することでAl欠損が形成されることが知られており、窒素原子の変位のエネルギーが低下したと考えられる。酸素の導入によって抗電界と絶縁破壊電界の電界マージンを大きくすることができたが、信頼性向上が期待されたが、スイッチング回数では特に大きな改善効果はみられなかった。一方、放射光を用いた光電子分光では、酸素混入によるバンドギャップの変化は小さいことが分かった。一方で、逆にAlScN膜と金属の界面の混入酸素量を低減した試料を作製した結果、リーク電流の抑制と共にスイッチング回数の向上を得ることができた。このことはAlScN膜と金属の界面に存在する酸素原子が信頼性に影響を与えていることが分かった。本成果は強誘電体AlScN膜の信頼性を向上する一つの指針を示す内容であり、意義が大きいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AlScN膜と金属電極の界面に存在する酸素がスイッチング回数の課題の一つの要因であることが分かった。そのため、スイッチング回数が向上できる条件を見出すことができたため、今後の界面設計のガイドラインを構築できる見込みがたったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は得られた成果に基づき、スイッチング回数が決定されるAlScN膜と金属の界面と、抗電界が決定されるAlScN膜を別に材料・プロセス設計を行うことで、強誘電性を損なわずに高い信頼性を得る強誘電体キャパシタを実現するガイドラインを作製する。
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Causes of Carryover |
研究に合わせて計画的に執行しているが、端数が生じたため次年度使用額が生じた。 一方、本研究で扱う原料が高騰しており、原料購入に合算して支出する計画にする。
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