2022 Fiscal Year Research-status Report
伝搬型・局在型表面プラズモン共鳴電界増強を利用した高感度有機ホトトランジスタ
Project/Area Number |
22K04238
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新保 一成 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80272855)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皆川 正寛 長岡工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (20584684)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 表面プラズモン / 有機ホトトランジスタ / グレーティング / 金属微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、表面プラズモン(SPR)の強電界を用いて有機層の光吸収を増強し、高感度な有機薄膜ホトトランジスタを作製することを目的としている。特に、グレーティングカップリングによる金属薄膜上の伝搬型表面プラズモン(PSPR)を利用するとともに、金属微粒子による局在型の表面プラズモン(LSPR)を複合化することで、格段の高感度化を実現することを目指す。アルミナ絶縁層やパッチ状金属膜、デュアルゲート構造の利用、感光性ゲート電極などにより有機層と金属薄膜間距離を大幅に近づけることで、SPRの電界を利用する。この研究により、従来を大きく上回る表面プラズモンの有効利用法を確立し、実用的な高性能光検出素子の実現と普及につなげていく。 これまでに、PSPRを利用するためグレーティング構造上にアルミニウム薄膜を堆積した素子について検討を進めてきた。PSPRは、グレーティングベクトルの方向の成分を持つ偏光を入射することで励起することができる。アルミニウム薄膜をゲート電極とするとともに、その上の酸化膜を絶縁層として、活性層にペンタセン、トップ電極に金薄膜を設けた構造とした。光の入射角を変えて測定を行ったところ、入射角を高くするとともにPSPRの効果が大きくなる様子が見られた。また、素子の光反射特性においてPSPRの励起波長は入射角とともに青色領域の波長にシフトすること、また光伝導特性の波長依存性において青色領域で顕著な応答が観測されることも確認した。これより、高角度側の光入射によりペンタセンの光感度が高い青色波長領域でPSPRを励起することで、ホトトランジスタの大きな応答が得られると考えられた。LSPRについても、金微粒子を表面に形成させた素子の特性評価を行い、オフ電流の増加を防ぎつつ金微粒子のLSPRを利用する手法を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の活動により、PSPRを用いて有機ホトトランジスタを高感度化できることが確認され、光入射角とPSPRの励起波長、感度な関係が得られた。また、LSPRの寄与についても検討し、金属微粒子による高感度化に関する基礎的な結果が得られている。これらの結果は、それぞれ国際会議(KJF International Conference on Organic Materials for Electronics and Photonics 2022, P-138, Sep.2, 2022)と国内学会(応用物理学会 北陸・信越支部 第6回 有機・無機エレクトロニクスシンポジウム, P-15, 2022年6月11日)において対外的に発表した。現状までにおおむね期待通りの成果が得られており、今後も研究の進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において支障は生じておらず、当初の計画通り研究を続けていく。昨年度までの素子構造について膜厚などの最適化を行っていくほか、これまで実施していない手法による素子作製を行う。すなわち、有機層にグレーティング構造をインプリントする形でトップゲート電極による表面プラズモン励起を行い、従来法の素子との比較を行う。他にも、パッチ構造金属膜、デュアルゲート金属膜におけるPSPRを利用して、さらなる高感度化が可能か検討する。これらの研究の成果を、学会および学術論文にて発表していく。
|