2022 Fiscal Year Research-status Report
座屈制御歪み構造体上での圧電MEMSデバイスの変換効率飛躍的向上メカニズムの解明
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22K04242
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 馨 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (40263230)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 圧電体 / 応力 / 座屈 / 変換効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧電効果を利用して機械・電気エネルギー変換を行う圧電MEMSデバイスにおいて,振動構造に静的座屈を導入することによりエネルギー変換効率が向上するメカニズムの解明と,デバイス高性能化の設計・製造手法を明らかにすることを目的としている。今年度は,圧電体を含む積層MEMSダイアフラム構造の座屈に際して生ずる圧電体への力学的負荷を考慮した製造プロセスの検討と,座屈現象の定式化を進めた。積層ダイアフラム構造が座屈により静的撓みを呈する現象は,構成する各層の残留応力に影響されるが,我々のデバイス構造においては圧電体が収縮力を生じることがこの現象に重要な役割を果たしている。圧電層の収縮力は,圧電層側が凸となる高変換効率側への座屈モーメントを生じる一方で,座屈量の低下を招く。この引張応力を低減することにより座屈撓み量を増大することが試みられたが,撓み量が5μm程度を超えると大きく感度が低下する現象が見られた。この感度低下の原因解明は今のところ十分ではないが,平坦な基板上に圧電層を形成した後に構造を座屈させるため,圧電層に引張歪みが生じており,これが原因の一つである可能性が検討された。座屈により面内に生じる引張歪みは撓み量の2乗に比例するため,撓み量がある程度大きくなると引張歪みの影響が格段に大きくなりうる。そこで改良プロセスとして,すでに座屈しているダイアフラム上へ圧電層を形成するプロセスを考案した。これを実現するためには脆弱構造上に圧電体を形成する技術が必要であるが,構造を破壊せずに製膜する条件を見出しつつある。またこのプロセスによる座屈現象の解析には,圧電層の形成途中に膜厚が段階的に増加することによる面内力の増加を考慮する必要があり,その定式化を進めている。今後改良プロセス条件の確立とその解析方法の完成により,圧電層に負荷を与えずにより大きな座屈撓み構造を実現できるように進めてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧電体を含む積層MEMSダイアフラム構造の座屈に際しての圧電体への力学的負荷を考慮した製造プロセスの検討と座屈現象の定式化を進め,エネルギー変換効率が向上しない原因追及の手段を確立しつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
脆弱構造を破壊せずに圧電体を製膜する条件を確立するとともに,このプロセスによる座屈現象の解析のために,圧電層の形成途中に膜厚が段階的に増加することによる面内力の増加を考慮した定式化を進める。これら改良プロセス条件の確立とその解析方法の完成により,圧電層に負荷を与えずにより大きな座屈撓み構造を実現する技術を確立する。
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Causes of Carryover |
当初デバイス作製のための消耗品購入を想定していたが,研究の進展に従いプロセス改良による新規デバイス構造の試作と評価を重点的に進めるようになったため。次年度以降,改良プロセス条件を確立して当初予定のデバイス試作を進めるため,各種消耗品の購入を進める。
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