2022 Fiscal Year Research-status Report
官学連携による振動発電技術を用いた橋梁引張部材の張力モニタリングシステムの開発
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22K04284
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
深田 宰史 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (10313686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 敏幸 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30338256)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 振動発電 / 張力 / ケーブル / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
イタリアの斜張橋,モランディ橋や台湾のニールセンローゼ橋,南方澳跨港大橋の崩落事故など吊ケーブルの腐食が原因とされる橋梁全体構造の崩壊事故が起きたことは記憶に新しい.これらの橋を含め,ケーブルなど引張部材を有する橋梁において,道路管理者は引張部材の張力を常時把握していないのが現状である.IoTおよびIT技術が発達した現在,予算や技術者が不足している地方自治体において,ケーブルなどの引張部材の張力を実橋で簡易に管理できるモニタリングシステムの開発が必要であると考えた. 本研究では,電源が容易に確保できない橋梁現場において,長期間,ケーブルなどの引張部材の張力をモニタリングできる振動発電を利用したモニタリングデバイスを開発し,地方自治体と連携して道路管理者が維持管理に役立つ張力モニタリングシステムの開発を目的とした. この目的に対して,今年度は,本学の近くに架設されている金沢市が管理するエクストラドーズド橋,朝霧大橋の斜材ケーブルを対象としたケーブルの振動実験を行った.まず,ケーブルに加速度計(707LF, TEAC製)を設置して人力による加振試験を行い,各ケーブルの卓越振動数を調べた.つぎに,計測した1次の卓越振動数を用いて簡易推定式により張力を求め,建設時の導入張力と比較した.その結果,卓越振動数から5%以内の精度で張力を推定できることを明らかにした.また,MEMSの加速度計により取得した加速度データを周波数分析し,ピーク周波数の上位5つの卓越振動数をLoRa通信(プライベート)により大学まで(約1-2km)無線送信できるデバイスを開発した.さらに,磁歪式振動発電デバイスをケーブルに設置して大型車1台走行による発電量を把握した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における研究計画は,以下のようになっている.①実橋梁におけるケーブル振動の計測(2022年度,深田),②ケーブル振動により発電,蓄電できる振動発電デバイスの開発(2022-2023年度,上野),③モニタリングした張力量の管理基準(しきい値)の検討(2023年度,深田),④地図上でアラートを表示できるシステムを構築(2024年度,深田). これに対して,各進捗状況は以下のようになっている. ①については概ね達成でき,本学の近くにある金沢市が管理するエクストラドーズド橋,朝霧大橋の斜材ケーブルを対象としたケーブルの振動実験を行った.ケーブルに加速度計(707LF, TEAC製)を設置して人力による加振試験を行い,各ケーブルの卓越振動数を調べた.また,計測した1次の卓越振動数を用いて簡易推定式により張力を求め,建設時の導入張力と比較したところ,卓越振動数から5%以内の精度で張力を推定できることを明らかにした. ②については,磁歪式振動発電デバイスをケーブルに設置して大型車1台が通過した時の発電量を計測した.その結果,振動計測・周波数分析とプライベートLoRa通信に必要な電力エネルギーは,振動計測方法(計測時間,FFT条件)と無線送信設定(電波強度,送信間隔など)に依存するため,交通量に合わせてこれらの設定を調整する必要があることがわかった. ③について,ケーブルなどの引張部材の張力をモニタリングするにあたり,得られる張力量の管理基準が必要となる.当該橋梁の設計荷重は,活荷重,温度荷重,雪荷重,死荷重が考慮されており,死荷重が75%程度を占めていることから,死荷重時の張力の変動を監視することが有効であると考えた.本研究では,死荷重が分担する張力をもとにした段階的なしきい値を設定することを検討している.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の計画は,②ケーブル振動により発電,蓄電できる振動発電デバイスの開発(2022-2023年度,上野),③モニタリングした張力量の管理基準(しきい値)の検討(2023年度,深田)となっている. この計画に対して,2023年度の推進方策およびその課題を以下に列挙した. ②については,大型車1台が通過した時の振動計測とプライベートLoRa通信に必要な電力エネルギーは,振動計測方法(計測時間,FFT条件)と無線送信設定(電波強度,送信間隔など)に依存するため,実際の交通量に合わせたてこれらのパラメータの設定を調整する.なお,ケーブル振動だけでは電力が賄えない場合は風振動とのハイブリッド化や太陽光とのハイブリッド化を検討する. ③について,死荷重時の張力の変動を監視するにあたり,段階的なしきい値の設定を検討する.
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Causes of Carryover |
分担者が,振動発電デバイスの開発準備として計上した20万円であるが,計画通り進まなかったため,次年度繰り越しさせて頂きました.
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Research Products
(1 results)