2023 Fiscal Year Research-status Report
常時微動の6成分展開観測に基づく地下構造推定の高度化と地盤災害抑止への応用
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22K04285
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
小嶋 啓介 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40205381)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 回転成分 / 6成分観測 / 表面波 / 伝播方向 / 位相速度 / 強震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
常時微動観測に空間自己相関法などを適用し,表面波の位相速度を算出し,その逆解析から地下構造を評価する方法が普及してきている.しかしながらRayleigh波とLove波の分離や,Love波速度の算定には課題が残されている.従来の観測対象である並進3成分に,回転3成分を加えた6成分情報を活用することにより,上記の課題が解決できる可能性がある. 本研究では6成分観測情報を多面的に活用して,表面波特性を推定する方法の提案とその有効性を検討している.Rayleigh波とLove波が同一方向から伝播すると仮定し,水平軸周りの回転速度に基づいて到来方向を求める.これにより水平方向並進成分からRayleigh波とLove波が分離でき,並進加速度と回転速度の比をとることによって,Rayleigh波とLove波の位相速度を求めることが可能となる.任意の方向から平面波として伝播するRayleigh波とLove 波からなる人工振動の単点6成分観測情報を作成し,その分析を通して,表面波の伝播方向,Rayleigh波とLove波の周波数ごとの振幅,ならびに位相速度が正確に算出可能であることを確認した.また,提案手法を強震動観測データに適用し,表面波位相速度が求められる可能性があることを示した. 上記の研究を通して,現在市販されているポータブル回転計では,微動レベルの回転速度を求めることが難しいことを確認した.このため,並進速度計を用いた常時微動の展開アレイ観測を行い,その空間微分から重心位置での回転速度を求めた.はじめに小型回転速度計の性能確認のため,並進計の空間微分による回転成分と比較検証した.ついで,並進加速度と回転速度の振幅比を用いて,表面波の位相速度を求める方法を適用し,従来のSPAC法や拡張SPAC法との比較を行い,その妥当性,必要条件や有用性について検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,並進3成分に回転3成分を加えた6成分観測情報を活用して,Rayleih波とLove波の,伝播方向,位相速度および振幅比等を求める多様な方法を提案し,その妥当性の検討を行っている. はじめに単点で観測される6成分情報に対し,以下の手順による推定法を提案した.すなわちRayleigh波とLove波が同一方向から伝播すると仮定し,水平軸周りの回転速度に基づいて到来方向を求める.これにより水平方向並進成分からRayleigh波とLove波が分離でき,並進加速度と回転速度の比をとることによって,Rayleigh波とLove波の位相速度を求めることが可能となる.次に,任意の方向から平面波として伝播するRayleigh波とLove波からなる人工振動の単点6成分観測情報を作成し,その分析を通して,表面波の伝播方向,Rayleigh波とLove波の周波数ごとの振幅,ならびに位相速度が正確に算出可能であることを確認した.また,提案手法を強震動観測データに適用し,表面波位相速度が求められる可能性があることを示した.この研究成果は,第16回地震工学シンポジウムで発表し,論文として投稿し,受理され現在修正論文を提出中である. さらに,小型回転速度計の性能確認のため,並進計の空間微分による回転成分と比較検証した.ついで,並進加速度と回転速度の振幅比を用いて,表面波の位相速度を求める方法を適用し,従来のSPAC法や拡張SPAC法との比較を行い,その妥当性,必要条件や有用性について検討した.この成果も地震工学シンポジウム,土木学会で発表しており,査読論文として受理され,現在は修正中である. 以上の成果により,当初の計画通り,順調に進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
提案手法の適用対象として,常時微動,工事や交通振動ならびに強震動に分けて適用性の検証を行う.はじめに,2024年能登半島地震とその余震を対象として,単点6成分観測結果に,提案手法を適用し,強震動から表面波特性が抽出できるか検討を行う.一方,常時微動については,並進計のアレイ観測を多重に活用し,空間微分から算出される回転成分と,並進成分を活用し,信頼性の高い表面波特性を算出する実用的なプログラムコードを開発し,社会に広く公開する.
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Causes of Carryover |
年度計画を予定通り遂行した結果,半端な額が残ったが,事務用品などで消費するより,次年度の経費と合算して活用した方が有益であると判断したため.
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