2022 Fiscal Year Research-status Report
不飽和ベントナイトの水分浸透モニタリングを目的とした光音響トモグラフィー
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22K04289
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木本 和志 岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (30323827)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | モンモリロナイト / 超音波 / 位相速度 / 不飽和粘土 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,不飽和粘土試料を作成して超音波測定を行い,粘土試料の含水比および乾燥密度と縦波速度の関係を調べた.実験に用いた粘土試料は,ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトと純水を混錬し,所定の含水比と乾燥密度になるよう試験セルに封入して締固めて作成した.超音波測定は,圧電超音波探触子を用いた透過法で行い,群遅延スペクトルを計算して縦波位相速度を求めた.試料の締固めに用いた試験セルは,締固め後に試料を取り出すことなく超音波測定ができるよう設計,製作した.これにより,摩耗や水分の蒸発などによる試料の劣化を避けることができ,効率的に再現性のある実験が可能となった.また,試験セル内の試料は,段階的に圧縮することで含水比を一定に保ったまま乾燥密度だけを変化させることができる.さらに,試験セル両端のプラグには,試料の流出を防ぐフィルタを介して給排水孔が設けられており,不飽和浸透試験を実施しながら超音波測定を行うことも可能な構造となっている.本年度は,上に述べた試験セルを使い,含水比15~25%,乾燥密度0.9~1.7g/cm3の試料を約90体作成し,試料の圧縮軸直角方向への透過波を測定した.測定結果は,別途計測した参照波形でデコンボリューションして群遅延スペクトルを求め,その勾配から位相速度を推定した.以上の結果,粘土試料を透過する縦波の位相速度は試料の乾燥密度と強い相関があり,水分量には影響を受けにくいことが分かった.これは,超音波測定に基づく乾燥密度のその場測定が実現可能であることを示唆し,粘土中の不飽和浸透挙動を理解するために有用となる非破壊計測技術の基礎となるデータが得られたことを意味する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では,試験セルおよび粘土試料の作成に加え,光音響法による超音波測定の予備実験まで初年度実施の予定であった.これに対し,試料と実験セル作成,圧電センサーによる超音波測定までは順調に進展したが,光音響法での超音波励起システムの構築にやや遅れが生じた.これは,当初購入を予定していたレーザー光源の仕様では,パルス励起時間の管理精度が十分でないことが判明し,装置仕様の再考が必要となったことによる.一方で,本年度,設計・製作し,超音波測定にも用いた試験セルは透明な樹脂(ポリカーボネート)で作成し,超音波送受信のためのレーザーを試験セル越しに試料へ照射できるように考えられている.そのため,レーザー励起措置の仕様を決定して適切な機器を購入すれば,当初想定していた計測系の構築には速やかに取り掛かることができる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達するには,レーザーを使った超音波の送受信を粘土試料に対して十分な信号-雑音比で実現することが重要な課題となる.送信に関して言えば,レーザーの持つエネルギーを,試料表面付近で効率よく熱エネルギーに変換して熱膨張を生じさせる必要がある.そこで,試料表面あるいは試験セル内側に,吸光性の高い素材で黒あるいは褐色にペイントを施すことを検討する.一方,受信ではレーザードップラー振動計で試料からの反射光を測定するため,金属光沢を呈するペイントを容器に施すことを検討する.加えて,試料中の超音波を試験セル外に導くウェーブガイドを新たに容器に取り付け,ウェーブガイドを介して透過波を測定することを試みる.最終的には,これらの中から最も効率の良い送受方法の組合せを見出し,不飽和粘土の超音波測定に用いる.また,レーザーによる測定結果の信頼性を担保するために,圧電素子を使った測定も並行して実施する.圧電素子による測定には手間が多く,データの蓄積には時間を要する.しかしながら,圧電センサーの感度はレーザーよりも高いことから,レーザー測定結果の妥当性を確認するための有用な参照データとすることができる.
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたNd-YAGレーザー装置は,ジッタ―が大きく本研究で対象とする周波数帯での超音波測定に不向きであることが判明し,装置仕様の再考が必要となった.そこで上位機種の購入を検討したが,円安の影響もあり装置価格が高騰しており,初年度予算では費用が不足することが分かった.以上のことから,適切な仕様のレーザー励起装置を購入するために,初年度予算のほぼ全額を繰り越し,当初計画と同じ使途で二年目以後に執行することとした.
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Research Products
(1 results)