2022 Fiscal Year Research-status Report
極低温環境下での非圧密非排水三軸圧縮試験による飽和含水岩石の強度特性の解明
Project/Area Number |
22K04302
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
鴨志田 直人 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00400177)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 凍結岩石 / 三軸圧縮試験 / 極低温化 / 破壊包絡線 / 強度定数 / 液化天然ガス(LNG) / 岩盤内貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
液化天然ガス(-162℃)の貯蔵に岩盤内貯蔵方式を用いる場合、貯蔵槽周辺岩盤内の間隙水は凍結することが想定されるため、その設計には水や氷が内在する岩盤の強度定数(粘着力・内部摩擦角)が必要となる。しかしながら、既存の三軸圧縮試験装置では、液体圧力媒体が温度の低下にともない固化するため供試体を冷却保持することが極めて難しく、極低温状態の岩石の強度定数は国内外問わず報告された例はない。本研究は、極低温状態にある岩石の強度定数の測定と間隙水が強度定数に与える影響を明らかにすることを目的としている。 令和4年度は、研究代表者が開発した岩石用極低温三軸圧力室およびセル圧発生装置の改良による実験環境の改善を実施した。はじめに、液体圧力媒体に用いる非常に高価(約3,300円/ml)な超高圧力媒体油の使用削減を目的に、ピストンで2室に仕切られたシリンダー(圧力変換チャンバー)を冷却恒温槽の外側に取り付け、手動ポンプから押し出される安価な機械油を圧力変換チャンバー内で液体圧力媒体に置換することで三軸圧力室の側圧を載荷する方式にセル圧発生装置を改良した。次に、三軸圧力室全体を任意の温度条件まで冷却速度一定で冷却し、温度保持ができる冷却システムを開発した。この冷却システムは、寒剤(液体窒素)の吹き付けによる冷却と抵抗加熱式ヒーターによる加熱によって、温度を目標値に保つ方式を採用した。最後に、供試岩石に飽和含水状態の来待砂岩を用い、温度-50℃、側圧17MPaの条件下での非圧密非排水三軸圧縮試験を実施した。過去に温度-50℃で実施された一軸圧縮試験、圧裂引張試験および一面せん断試験の結果と比較した結果、本試験結果の妥当性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度は岩石用極低温三軸圧力室およびセル圧発生装置の改良と冷却システムを開発を行うことで、温度-50℃、側圧17MPaでの三軸圧縮試験を実施することができた。この温度より低い温度での実施された三軸圧縮試験の報告は国内外を問わず見当たらない。したがって、令和4年度の研究実績と考える。 しかし、本研究課題では、温度条件を室温(10°C)、-10°C、-50°C、-100°C、-170°Cでの三軸圧縮試験を計画しており、当初目標としていた-170℃での三軸圧縮試験を達成するには至っていない。 以上より、本研究課題の達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続きセル圧発生装置の改良を行う。温度-80°Cで試験を行ったところ、圧力媒体が三軸圧縮室内に圧入することができず、側圧を載荷することができなかった。温度低下に伴い圧力液体媒体の粘性が想定よりも高かったこと、1ml約3,300円と非常に高価な圧力液体媒体の使用量削減を意識するあまり、三軸圧縮室と圧力変換チャンバーをつなぐステンレスパイプの内径を細くしすぎたことが原因と考えている。そこで、圧力変換チャンバーを含むセル圧発生装置の設計を見直す計画である。 また、令和5年度に実施を計画していた、低温から極低温における乾燥砂岩の強度定数の測定を実施する。乾燥砂岩(飽和度約0%)に対して非圧密非排水三軸試験を実施する。具体的には、温度条件を室温(10°C)、-10°C、-50°C、-100°C、-170°Cの5段階、拘束圧条件を0、5、10、20MPaの4段階、計20条件で実験する計画である。
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Causes of Carryover |
当初、計画していた超高圧媒体油の購入を、岩石用極低温三軸圧力室と圧力変換チャンバーの加工に時間がかかったことから見送ったこと、また、岩石用極低温三軸圧力室と圧力変換チャンバーの製作費(依頼料金)が、当初の計画よりも安く収まったことから、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、翌年度分として請求する助成金と合わせて、今年度購入を見送った超高圧媒体油の購入に充てる計画である。
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