2022 Fiscal Year Research-status Report
加速的手法による自然由来重金属含有土壌の長期変質・溶出挙動予測に関する研究
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22K04319
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊藤 健一 宮崎大学, 国際連携機構, 准教授 (90524695)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 液固比バッチ試験 / 溶出リスク / 酸性硫酸塩土壌 / 加速変質 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然由来重金属含有土壌の溶出やpHの長期挙動の評価は開放系の通水型試験で行われるが、実時間同様の長期間を要する。一方、比較的短期間で溶出傾向が評価できる閉鎖系のバッチ試験は、試験時の状態の土壌しか評価できず、評価に経時変化の影響が含まれない。 そこで、酸化に伴い酸性化する酸性硫酸塩土壌と酸化後も酸性化しない土壌など傾向の異なる複数土壌に対して、経時変化を模擬した酸化促進後に液固比バッチ試験を行って通水型試験と比較し、短期間のバッチ試験でも通水型試験と同様の溶出挙動の予測できる可能性を検討した。通水型試験は、屋外曝露試験とカラム通水試験を行った。 土壌の酸化の影響については、含有する黄鉄鉱の溶解状況で評価できることから、硫酸イオンを対象に、液固比バッチ試験の土壌1kgあたりの溶出量(mg/kg)、通水型試験の累積溶出量(mg/kg)で比較した。低液固比では通水型試験と液固比バッチ試験の結果は近い傾向を示したが、通水量が液固比5~10以上では通水型試験の累積溶出量が液固比バッチ試験の溶出量を大きく超えた。これは、通水型試験では通水により硫酸イオンが逐次流出し、バッチ試験に比べて土壌から溶出しやすいためである。 そこで、溶出量や累積溶出量ではなく濃度で比較した。液固比バッチ試験は溶出濃度(mg/L)を、通水型試験は逐次回収の通過水の濃度(mg/L)×回収水量(L)から得られる溶出した実量(mg)を通過水の総量(L)で除した「累積平均濃度(mg/L)」を用いて比較した。結果、動的試験の結果でありながら土壌から溶出量を反映した累積平均濃度(mg/L)は、静的条件の液固比バッチ試験の酸化促進後の硫酸イオン濃度に近い値を示した。 以上の結果から、長期の通水型試験で得られる硫酸イオン濃度の挙動を、酸化促進処理と液固比バッチ試験の組み合わせでより短期間に予測することができる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JSPS科研費19K04601(2019-2021)では、液固比バッチ試験を用いた土壌の溶出挙動のモデル化を示し、併せて開発した酸化促進処理と液固比バッチ試験の組み合わせにより、酸化後の土壌を模擬的に作り出して溶出挙動を評価ができる可能性を示した。 これを踏まえて、本研究のこの1年目では、酸化に伴い溶出が増加する挙動を示す酸化の指標的な硫酸イオンを対象に、屋外曝露やカラム通水試験といった開放系の通水型試験の結果と、酸化促進処理と液固比バッチ試験の結果から得られた硫酸イオンの溶出挙動を比較して、この閉鎖系のバッチ試験による短期間の試験手法により通水型試験で得られる溶出挙動を模擬、予測できる可能性を検討した。 その結果、酸化の影響を受ける土壌の溶出挙動について、通水型試験や実環境で観測される硫酸イオンの挙動を、酸化促進処理と液固比バッチ試験の組み合わせで予測できる可能性を示した。 ここまでで1年目の成果としてはおよそ目標に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の令和4年度は、酸化の影響を受ける土壌の溶出挙動について、通水型試験や実環境で観測される硫酸イオンの挙動を、酸化促進処理と液固比バッチ試験の組み合わせで予測できる可能性を示した。 2年目の令和5年度は、硫酸イオン以外の重金属等に対しても適応できるように検討を進める。しかし、硫酸イオンは黄鉄鉱等の酸化溶解により逐次流出する傾向にあるが、重金属は他成分の影響を被ることが懸念される。具体的には、黄鉄鉱等の溶解で硫酸と同じく生じるひ素は、同時に生じる鉄などの酸化で生じる水酸化物等の二次鉱物に共沈、吸着して濃度低減してしまう場合がある。特に、成分が系外に流出せず留まる閉鎖系のバッチ試験では、系内の鉄濃度が上昇しかつ酸化の影響を受け続けるため二次鉱物が生じやすく、その傾向が顕著となると考えられる。したがって、ひ素などの評価は、バッチ試験では不向きである可能性が考えられる。 そこで、通水型試験とそのものを加速化することを検討する。1年目の成果を踏まえて、酸化促進の温度条件等を段階的とした酸化促進処理土壌を液固比バッチ試験で評価することで、温度条件における酸化促進の加速度を導く。次にこの加速度に応じてカラム通水試験における通水の流速を計算する。これをカラム通水試験の仕様に反映させて、加温と流速の加速による通水型試験の迅速化を行い、実現象と同じ動的条件のカラム通水試験を加速化した「加速変質通水試験」の試行を行う。 そして3年目には、この新しい通水試験方法について複数土壌で評価検証を行い、長期変質溶出挙動の連続的把握方法として構築、提案する計画である。
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Research Products
(1 results)