2023 Fiscal Year Research-status Report
Heat and moisture transfer in the unsaturated wave field under explosive cyclones
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22K04324
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
猿渡 亜由未 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00563876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 靖憲 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20292055)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 砕波 / 爆弾低気圧 / 白波被覆率 / 大気海洋間輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では冬季爆弾低気圧の通過経路頻度の高い北海道オホーツク海沿岸の紋別市オホーツクタワーにおける気象海象連続観測に基づく大気海洋間輸送フラックスの海面状態への依存性を明らかにすることを目指して研究を継続している. 2023年度は海面画像を取得するために2022年度に新たに設置した2台のウェブカメラの撮影条件並びにキャリブレーション方法の改善を行った.更に1組の画像ペア間での画像相関点の計算法に大幅な修正を加えることにより,2022年度は概形の推定にとどまっていた暴波浪時の白波波面の3次元形状をより詳細に取得することに成功した.2つの画像から求められた個別の波の三次元波面形状(波高,波速)は,オホーツクタワーから18 km東に位置する全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)の紋別(南)観測点における統計波浪観測データと矛盾しない結果となっており,本研究で開発したカメラ画像を元にした三次元白波波面形状測定法の有用性を示すことができた.2023年度は共同研究者が主導する他の研究プロジェクトにおいて,オホーツクタワーの水面下に新たな水中観測器として波高計並びに水温計の設置を行い,これらにより取得されたデータを本研究のためにも用いることで同意を得ている.これまで観測結果の解析には紋別(南)ナウファスデータの浅水変形を考慮した換算値から波高データを用いていたが,同一地点での大気海洋データ同士の直接比較が可能となる.また,オホーツクタワーでは当研究の研究協力者が新たに船舶用データを設置する準備を進めており,これもまた得られたデータを本研究のために用いていいとの合意を得ている.これが稼働し始めればタワー地点での波浪データだけではなく,その周辺海域における波浪情報も取得することができるため,荒天時の暴波浪の発達伝搬に関するデータの充実が図られる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は爆弾低気圧の経路直下に位置する確率の高い北海道紋別市オホーツクタワーにおける海上現地観測に基づき,冬季寒冷海域において高濃度バブルクラウドの混入と大量の波しぶき放出を伴う暴風白波海面を介した大気海洋間の熱,物質輸送モデルの提案を目指すものである.当初の申請書に記載した研究計画のように,本研究は海上現地観測を中心に据えた研究プロジェクトであり,昨年度から今年度にかけて着々と海上気象海象観測システムの構築を進めることができた.また,研究代表者の共同研究ネットワークを駆使して,他の研究プロジェクトにおいて得られる現地観測データの共有や現地観測システムの構築にかかる技術協力を得ることにより,効率的に研究計画を進めているところである.2022年度に既に設置していたウェブカメラからの海面画像から,爆弾低気圧通過時の冬季暴波浪面における白波検出も進められており,白波被覆率が波エネルギーの消散とよく相関していることが確認された.また,本研究では現地観測と並行して砕波に伴う気泡や飛沫を介した気液間輸送のマイクロメカニズムを詳細に明らかにするために数値実験を行う計画としており,2023年度はそのための数値解析コード開発準備を行った.テスト計算において気流中のサブミリメートルスケールの単一液滴の気液海面の境界層剥離過程を数値解析により再現しうる目途が立った.また,白波水面で絶えず生じる水面バブルの破裂に起因する飛沫の飛散とバブル内の圧縮空気の放出による,気相の温度変化や乱れの発達過程をBackground Oriented Schlieren 法により可視化計測することに成功した.現地観測,数値実験,室内実験の各要素研究において順調に新たな知見を獲得しているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度までの研究により,オホーツクタワーにおけるステレオ海面形状観測がうまくいき始めたところであり,いくつかの条件においては詳細な現地白波海面形状の取得が可能となったところである.その一方で吹雪を伴う暴風波浪イベントにおいては雪片のランダムな映り込みにより2台のカメラによる取得画像間での画像相関がうまくとれず,三次元波面形状の計算がうまくいかない場合がある.冬季爆弾低気圧は激しい降雪を伴う場合が多いため,雪片の映り込みに起因する画像ノイズ除去を行うための画像処理を導入し,より多くのタイミングにおいてステレオ波面観測ができるようにする.非線形波面形状や風条件に対する波の発達率と白波被覆率との関係に着目し,未発達波浪場における砕波率を決定するファクターを明らかにしていきたい. さらに波しぶき,気泡スケールの気液間熱,物質輸送過程のマイクロメカニズムを詳細に明らかにするために,2023年までに行ってきた数値解析,室内実験を継続していく.これらを現地観測により得られた白波被覆率や気泡,飛沫発生率に関する知見と統合することにより,大気海洋間輸送のより詳細な理解を目指したい.
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Causes of Carryover |
計画通り使用したが,購入額の端数等で残額が生じた.次年度の予算に組み入れて有効に使用したい.
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[Journal Article] 海洋画像観測による白波波峰長と残留泡沫のスペクトル特性2023
Author(s)
渡部 靖憲, 南 健人, 猿渡 亜由未, 馬場 康之, 久保 輝広, 森 信人, 内山 雄介, 志村 智也, 大塚 淳一, 新井田 靖郎, 二宮 順一
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Journal Title
土木学会論文集
Volume: 79
Pages: 23-17007
DOI
Peer Reviewed
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