2022 Fiscal Year Research-status Report
沿岸浅水域における土砂移動ベクトルの定量的推定方法の構築
Project/Area Number |
22K04330
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
加藤 茂 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40303911)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁木 将人 東海大学, 海洋学部, 教授 (30408033)
岡辺 拓巳 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50464160)
松田 達也 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50736353)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 土砂移動 / 地形変化 / 砂漣 / UAV / 潮位変化 / 現地観測 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
近い将来の地球温暖化・海面上昇に対応した沿岸浅水域の適切な空間管理・保全を実現するためには,空間(地形)とその変化を引き起こす対象領域内での土砂動態の把握が不可欠である.対象とする領域の地形変化(差分量)から土砂移動量や移動方向を推定する方法が一般的ではあるが,地形変化量から推定される移動量はその期間での正味の土砂移動量であり,総移動量と等価であるとは限らない.地形変化量からの土砂移動量推定は過小評価になることはあっても過大評価になることはない.適切な地形管理・保全には,定量的な土砂動態(移動量と移動方向)の把握が不可欠である.本研究は,三河湾内にある干潟を研究フィールドとして,現地調査と数値計算を併用し,定量的な土砂移動量・方向の推定・評価方法の構築を目指す. 本年度は,現地調査により干潟上に形成される微小地形(砂漣)上での地形(形状)変化,土砂移動の観測を実施し,海象条件と地形変化,土砂移動の関係について分析を行い,土砂移動が生じる海象条件の把握を行った.潮位変化による水深の低下が砂漣上での土砂移動発生に大きく影響していることが明らかとなった.また,UAVを用いた干潟全体の地形計測により詳細な3次元地形情報を取得し,過年度データと比較することで近年の変化の傾向を分析した.特に本年度は,昨年度からの変化として干潟の西側領域で土砂の堆積が顕著であり,緩勾配化が進んだ.UAVで取得した空撮画像からは,干潟上での砂漣の形成範囲を分析し,メートル・スケール以下の微小地形と数~数十メートル・スケール以上の中・大規模地形の特徴との関係性についても分析を行い,微小地形の把握が干潟全体の地形的特徴の把握に繋がる可能性を見出した.数値計算では,現地調査フィールドである干潟とその周辺海域を対象とした流動場の再現計算を試みた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた小領域での土砂移動・地形変化に関する現地調査,干潟全体の地形変化調査,数値モデルを用いた流動場と土砂移動追跡の計算を実施することができた.現地調査に関しては,海象条件や天候の影響で当初予定していた回数は実施できなかったが,次年度のデータ分析に繋がるデータの取得はできた.また,適切な土砂移動量推定のための観測方法の課題,改良点も明らかとなり,次年度の有効な調査データの取得に繋がる知見も得られた.数値モデルを用いた検討では,流動場の再現精度の向上にまでは至らなかったが,今後,数値計算による土砂移動経路の推定を実施するための準備を整えることができた.今年度の成果は,取りまとめて論文として投稿中である.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き,現地調査を実施しデータの取得を行う.蓄積した現地調査データを分析し,小領域における土砂移動量を定量的に推定することを目指す.その結果とUAVによる干潟全体の地形的特徴や地形変化を対応付け,小領域での土砂移動量の推定結果から干潟全体での土砂移動量・移動方向(土砂移動ベクトル)の推定に繋げる.加えて,数値計算も実施し土砂移動経路を推定することで,研究対象フィールドでの土砂動態の全容を把握する.その成果に基づき,気候変動等の影響を考慮した干潟地形の管理の方法を検討する. 次年度は小領域での土砂移動量の定量的推定,数値計算方法の確立と再現精度の向上を行う.
|
Causes of Carryover |
海象条件または天候不良,調査機器の故障等のために,現地調査が予定の回数分だけ実施できなかった.そのため,その他経費(役務費等)の支出が計画よりも少なかった.また,予定していた機器のメンテナンスが,メーカーの資材不足等のために実施できなかったため,その他経費の支出が少なかった. 本経費での数値計算・データ解析用の計算機購入を予定していたが,他経費で代替機の購入できたため,本経費で予定していた計算機の購入は一時中止とした. 次年度繰越分は,本年度実施できなかった現地調査,機器メンテナンスに充てる.また,数値計算による検討を進めるには,現在の計算機環境ではやや不足することが明らかとなったため,新たな計算機の購入もしくは計算機環境の充実を行う予定である. 次年度経費と合わせて,計画通りの現地調査,数値計算が実施できるよう適切に使用する.
|