2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of solar radiation data assimilation method to improve the accuracy of rainfall prediction
Project/Area Number |
22K04336
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
森脇 亮 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (10302952)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | データ同化 / 日射量 / 局地気象 / 降水予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「雲の有無やその厚さによって刻一刻と変化する地上日射量は同化データとして有用である」ことに着目し,従来は用いられてこなかった日射量の減衰量を気象予測モデルにデータ同化する手法を開発し,降雨予測の精度向上における新たなデータ同化手法の有効性,及び同化に使用する日射量データの空間的・時間的な密度(粒度)が降雨予測の精度に与える影響について評価することを目的としている.本研究では三点の問い(①日射量データ同化の理論構築,②雲水量鉛直分布の導出方法の確立,③データ同化に有効となる日射量の空間的な範囲と時空間的な密度(粒度)の検討)に取り組むこととしている. 令和5年度は,主に③データ同化に有効となる日射量の空間的な範囲と時空間的な密度(粒度)の検討を進めた。空間情報を保持しつつ時系列データの処理が可能なConvolutional LSTMを用いて,現在から直近2.5時間分の気象データを入力し,1時間後の降水量を予測するモデルを作成した.学習データに降水量以外の気象要素を追加することや学習データの拡張により,降雨予測に効果的となる学習データの検討を行った.その結果,海面更正気圧の追加や,適切なデータ拡張手法の適用で,40mm h-1以上の降水に対しては気象庁現業モデルの降水短時間予報の精度を上回ることが確認された.また,全雲量や東西風・南北風を追加した場合,拡張データの適用によって強い降水の予測精度が向上する場合が多く,課題であった深層学習による強い降水の予測は適切な学習データで改善される可能性が示唆された. このように,降雨予測の精度向上に有効となる気象要素,空間的な範囲・時間的な履歴についての検討を行い,今後データ同化に用いるデータ範囲について有効な知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では「雲の有無やその厚さによって刻一刻と変化する地上日射量は同化データとして有用である」ことに着目し,従来は用いられてこなかった日射量の減衰量を気象予測モデルにデータ同化する手法を開発し,降雨予測の精度向上における新たなデータ同化手法の有効性,及び同化に使用する日射量データの空間的・時間的な密度(粒度)が降雨予測の精度に与える影響について評価することを目的としている.本研究では三点の問い(①日射量データ同化の理論構築,②雲水量鉛直分布の導出方法の確立,③データ同化に有効となる日射量の空間的な範囲と時空間的な密度(粒度)の検討)に取り組むこととしている. 令和5年度は,このうちの③データ同化に有効となる日射量の空間的な範囲と時空間的な密度(粒度)の検討を進めている.空間情報を保持しつつ時系列データの処理が可能なConvolutional LSTMを用いて,現在から直近2.5時間分の気象データを入力し,1時間後の降水量を予測するモデルを作成した.学習データに降水量以外の気象要素の追加や様々なデータ拡張により降雨予測に効果的となる学習データの検討を行ったところ,海面更正気圧の追加や適切なデータ拡張により,40mm h-1以上の降水に対しては気象庁現業モデルの降水短時間予報の精度を上回ることが確認された.また,全雲量や東西風・南北風を追加した場合,拡張データの適用によって強い降水の予測精度が向上する場合が多い. このように,降雨予測の精度向上に有効となる気象要素,空間的な範囲・時間的な履歴についての知見が蓄積されており,研究課題はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に開発した自立型のリアルタイム日射量モニタリングシステムにより,継続的かつ時空間的に密な日射量の観測を続けており,このデータを用いて日射量の時空間的な減衰情報を雲の種類や雲量等との対応関係を明らかにする.また令和5年度に検討した降雨予測の精度向上に有効な気象要素,空間的な範囲のデータの収集を行う.これには地方自治体が独自に展開している気象観測システムPOTEKAも含む. なお,日射量から推定した雲水量や雲の厚さ,雲水混合比などの雲情報を直接同化させることが最も効果的な方法であると考えられるが,気象モデルにおける雲の生成には雲物理モデルが介在しているため,雲水混合比を同化データとして直接与えることは出来ない.そこで,上空に存在する雲水混合比を生み出すのに必要な水蒸気の鉛直分布や上昇気流を雲物理モデルから逆推定して求める手法を含めて,上空の雲の特徴量に合わせた効果的なデータ同化の手法について検討する.
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた主な理由は,予定していた学会発表のための出張予定が次年度に繰り越されたこと,及び自立型リアルタイム日射量モニタリングシステムを狭い範囲に限定して構築したこと(令和5年度末で5地点)である. 令和5年度,降雨予測の精度向上に有効となる気象要素,空間的な範囲・時間的な履歴について知見が得られたため,この研究発表のために令和6年度に旅費を使用する計画である。また,自立型リアルタイム日射量モニタリングシステムについては,安定的に動作することが確認できたこと,また狭い範囲での計測データの蓄積が進んだことから,令和6年度地点数を増やす計画であり,この装置制作のために物品費を使用する計画である.
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Research Products
(1 results)