2022 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive evaluation of flood control, water use and ecomorphological functions of rubble-mound river structures
Project/Area Number |
22K04341
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
道奥 康治 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40127303)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 河川構造物 / 流体力 / 透過流 / 流量制御 / 水位制御 / 減勢機能 / 洪水解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
多自然川づくりでは,流れの多様性や景観を創出するために,護岸,堰,床止め,水制などの水工構造物を巨石や修景ブロックで構築することが多い.特に自然石材料の場合には,地先近隣の原石山や河川内から低廉に調達することが可能であり,人工材料のような摩耗や経年劣化の心配がない.また,石積み構造物は多孔性・透過性を備えバイオ・ハビタットを提供するとともに,曝気促進や有機物・濁質の分解・除去など浄化機能を期待することもできる.しかし,河川構造物は低水から高水に至る様々な流況に暴露されるため,集中荷重への耐荷力が剛体構造物に比べて小さな石積み構造の場合には,きめ細やかな維持点検と補強・修復を前提として管理する必要がある.本研究では,洪水時の短期出水や1年365日の水文変動に対応する長期出水を想定し,治水・利水・環境面から見た石積み構造物の付加的機能を,同一諸元の不透過構造物(従来技術)との比較から総合的に評価する.主に着目する水理特性や構造物性能は,水位・流量制御機能,流れエネルギーの拡散・消散特性,可撓・屈撓性による河床との密実性,構造物周縁の局所洗堀の抑制,曝気促進・汚濁除去などである.初年度においては石積み堰を対象として,国内中小河川で発生し得る単一ピーク型ハイドログラフのモデル洪水に対して非定常水理解析を実施した.過年度の科研費補助事業(基盤研究(C)「自然材料を利用した水工構造物の学理構築と公式化」,2017-2022年度, 17K06588)で得られた石積み堰公式を利用して,石積み堰の貯留・疎通特性,洪水減勢機能,構造物各所の流体力成分,汚濁除去率などの時間履歴が得られ,石積み構造物の治水・利水・環境機能を総合的に評価するために必要な知見を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
石積み堰は①水深が堰高より小さく,堰が干出して(Emerged)流れが伏没した非越流状態のRegime-E,②上流側で堰は冠水するが(Submerged),下流側では流れが伏没する部分越流状態(Partially submerged)のRegime-P,③堰が全区間で冠水し(Submerged)完全越流状態のRegime-Sに分類される.さらに,各Regimeは下流から背水の影響を受けるB-Flowと下流端で支配断面が発生して背水の影響がないC-Flowに二分される.洪水時にはこれら6つのRegime間を流れが推移し流況は時々刻々変化する.本年度は単一ピーク型ハイドログラフのモデル洪水に対し石積み堰の非定常流解析を実施した.上下流水深と流量に関する石積み堰公式を用いて洪水追跡に必要な境界条件を与え,堰の貯留水深,越流・透過流量,エネルギー減衰効率,石積み堰上下流面に作用する直応力・内部抗力,堰表面の摩擦力,汚濁除去率などの時間変化が得られた.これら環境水理パラメータの経時変化のみならず,「貯留水深-動水圧差」を二軸とする平面(Regime Map)上で6つのRegimeを分類し,Regime Map上に洪水履歴曲線を描くことによって各パラメータの時間推移が様々な堰諸元と洪水ハイドログラフに対して示された.同一諸元の不透過堰(従来技術)に対しても非定常解析を実施し,「石積み-不透過」構造間の比較から,石積み堰は洪水伝播速度とピーク水位を不透過堰よりも低減させて治水機能が高いこと,不透過堰においては堰高以上の水深でしか取水できないが,石積み堰の場合には河床以上の水面-すなわち水深がゼロ以上であれば取水が可能であること, Regime-Eにおいては一定の浄化機能を期待できるが,増水にともないRegime-P, Sなど越流が支配的になると浄化率が急減することなどの特徴が定量的に示された.
|
Strategy for Future Research Activity |
中小規模の河川流域を対象として地形・降雨特性に応じた流況・出水特性を推算し,5~20確率年相当(整備計画規模)の高水と低水・平水を含む流量時系列を生成して365日×数10年間の長期不定流解析の実施方法を検討する.水質浄化機能に関しては懸濁態の有機物・栄養塩を対象に汚濁除去率を推定するが,具体的な物理的・生物化学的反応を特定しているわけではない.河川水や下水の礫間接触酸化に関する国内外の知見を収集して的確な反応定数を設定し汚濁除去率を包括的に推定する.また,対象構造物としては,高さ一定の長方形石積み堰を法線に直角に配置する場合のみならず,流程方向に堰の高さが変化する場合,護岸法線に対して堰を斜め配置にした場合,堰軸を凹型の折れ線形あるいは曲線形にして流心を河道中央に整流し護岸への水あたりを緩和する構造など,堰の多様な線形・配置についても治水・利水・環境機能を検証する.この場合には構造物の平面形状に適した数値解析格子網を生成する.石積みの護床工,水制,床止めの場合にも堰と同様の水理解析が可能であるため,これら多様な構造物について流量,河道地形に応じた寸法諸元を設定し環境水理機能を明らかにする.一般に横断工作物は流下方向に複数基を分散配置する場合も多い.本研究では分散配置の基数と流水制御機能や水質浄化率との関係も検討する.石積み構造は流体力に応じて石礫層が変形し大きな荷重が作用する場合には崩れる.このように可撓性に富んだ石積み構造は河床との密実性によって浸食を抑制できる反面,出水毎の点検・補修が不可欠で管理上の前提となる.構造物各部の流体耐荷力を水理解析によって評価し構造補強の考え方を整理する.以上は本年度から最終年度までの二カ年にわたる研究工程である.
|
Causes of Carryover |
前年度の夏期に国際会議参加のための海外出張を予定し,予算計画を立てていたが,コロナ禍が収束せずに参加を見送った.
|