2023 Fiscal Year Research-status Report
フラクタル次元を用いた道路空間の定量化と脳波特性による安全性評価に関する研究
Project/Area Number |
22K04351
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
高瀬 達夫 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10283235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 瑛士 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (60899326)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | フラクタル次元 / 街路空間 / 脳波 / 夜間照明 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では道路空間の色彩や明るさをフラクタル次元を用いて定量化し、運転者の心理状態や安全性に対して、色彩や明るさの分布状態の連続性が与える影響について明らかにするため、さまざまな状況下の道路空間において分析を行うこととしている。 本年度はまず昨年度に引き続き様々な街路を抽出して分析を行ったが、特に本年度は直線区間とカーブ区間では運転者の視野に入ってくる映像について道路の奥行に違いがあるため、フラクタル次元が刻々と変化することが想定され、カーブ区間を対象に抽出して分析を行った。分析の結果、夜間ではカーブ区間においては運転者の視界に入る映像内の道路照明の間隔が直線区間に比べて大きくなっているため、フラクタル次元の値に変化が見られた。さらに当該映像を用いて実験を行った結果、「安全」、「快適」、「安心」、「誘導性」の項目において直線街路よりもカーブのある街路の平均点が低くなる結果が得られた。また、直線街路とカーブのある街路で相関係数が大きく異なる点があったが、「安心」に対して直線街路では「安全」と「快適」のみの正の相関が高い値となったが、カーブのある街路では上の二つに加えて「街灯の明るさ」、「誘導性」、「街灯の間隔」の正の相関も高くなっていることが明らかとなった。特に、この3項目は街灯に対する評価項目であることから、カーブのある街路では街灯の配置や明るさなどによって誘導性を高めることが運転者の安心感を高くする要因になっていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画初年度に分析を進めていくに従い、計画当初あまり念頭に入れていなかったカーブ区間の重要性について再確認したため、カーブ区間と直線区間で似た周辺環境をもつ街路についての比較分析を行った。そのため、当初予定していた道路走行空間における運転者の心理的状態の変化について、脳波測定器を用いた脳波データの計測がずれ込み、本年度は、実験が適切に行われるよう最適な測定環境をどのように構築するか準備を行うにとどまった。こうしたことから、脳波測定を用いた予備実験および本格的な実験が次年度にずれ込むこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
道路走行空間において、運転者の心理的状態の変化を計測するために、脳波センサーを装着し街路空間の映像を用いて実験を行い、脳波測定器を用いて脳波データを計測する。 測定された脳波は解析ソフトを介して周波数領域での強度を表わすパワースペクトルに変換する。α波は8~13Hz、β波は14~38Hzの周波数帯に位置する脳波であり、α波、β波それぞれの出現強度は該当周波数帯でのパワースペクトルの積分値で与えることとし、それぞれα波、β波のパワー値と呼び、これらの値を脳波特性として評価に用いることとする。フラクタル次元解析結果のデータと実験によって得られた運転者の脳波特性との関連分析を行い、その結果から直線区間やカーブ区間などの道路状況別に運転者に安全・安心をもたらす、最適な色彩や明るさ、フラクタル次元の有効性についての検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究開始当初は研究計画通りに分析を進めて行ったが、分析を行っている過程で当初の研究計画で対象としていた街路空間だけでなく、運転者が見ている映像に変化が生じる街路についても分析を行う必要があると考えたため追加で分析を行った。そのため、当初の研究計画では脳波測定環境を構築する準備を本年度当初から始める予定であったが、前述の理由により、本格的にな実験が本年度に行うこととなったため、本年度使用額を一部持ち越すこととなった。当初の計画より遅れが生じているが、次年度は速やかに実験を行い、研究計画に基づいて研究を進めていく予定である。
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