2023 Fiscal Year Research-status Report
炭化繊維布の投入による直接電子伝達の促進と緩速撹拌によるメタン発酵の効率化
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22K04375
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松本 明人 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (30252068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 豊 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (00542911)
清野 竜太郎 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90214915)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | メタン発酵 / 緩速撹拌 / 導電性炭化繊維布 / セルロース / 可溶性でんぷん / 連続式実験 / 回分バイアル実験 / 菌叢解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では廃棄物系バイオマスのメタン発酵において、槽内を緩速撹拌することにより、菌体と固形性基質を反応槽底部に沈降させ、沈降した菌体と基質を長時間接触させるとともに、大量の菌体を槽内に保持し、さらに導電性の多孔質炭化繊維布を槽内に投入することで、細菌間の直接電子伝達を促進させ、発酵の効率化と円滑化を目指す。 令和5年度は令和4年度に使用したキュプラを原料とする炭化繊維布に代え、バンブーレーヨンを原料とする炭化繊維布を用い、添加量を液相部の重量パーセントで0 %、0.1 %、0.5 %に変化させ、ろ紙粉末を基質に、回分バイアル実験をおこなった。実験の結果、炭化布0.1 %添加のとき、一次反応速度定数は無添加の系に対し18 %と最も増大した。ただしキュプラ原料の炭化布での増大率のほうが高かった。 続いて溶解性有機物排水として基質に可溶性でんぷんを用い、撹拌子回転速度10 rpmおよび100 rpmで連続処理する実験を、メタン発酵の標準的な運転pH7.1で実施し、セルロースのメタン発酵の最適pH6.6で令和4年度に実施した結果と比較した。その結果、緩速撹拌の10 rpmでのメタン転換率は65 %、完全混合の100 rpmでの転換率は67 %となり、溶解性有機物排水処理では緩速撹拌でも完全混合でも同等な処理性能が得られること、でんぷんのメタン転換率はpH7.1よりpH6.6で高いことがわかった。 最後に回分実験で良好な結果が得られたキュプラ原料の炭化繊維布を液相部の重量パーセント0.1 %の割合で添加し、ろ紙粉末を基質に、水理学的滞留時間8日、撹拌子回転速度10 rpmで、連続式実験を開始した。炭化繊維布投入後も撹拌に問題はなく、メタン転換率も72%と炭化布無添加のときと同程度の値が得られている。 なお共同研究者に依頼し、菌叢解析および炭化繊維布の電子顕微鏡による観察も実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の実験では、新たにバンブーレーヨンを原料とする炭化繊維布が入手でき、電気抵抗率を計測したところ、キュプラ原料のものより低かったため、当初計画に追加し、この炭化繊維布を用い、ろ紙粉末を基質に回分バイアル実験をおこなった。実験の結果、メタン生成ポテンシャルでは炭化繊維布添加の効果は見られなかったが、一次反応速度定数に関しては液相部の重量パーセント0.1 %の炭化繊維布添加の系で18 %の増大が見られた。ただしキュプラ原料の炭化繊維布で得られた増大率の半分程度であった。 そして緩速撹拌条件下における溶解性有機物排水の処理特性を調べる実験として、令和4年度ではセルロースと溶解性有機物の同時処理を想定し、セルロースのメタン発酵の至適pHであるpH6.6で実験をおこなったが、令和5年度では溶解性有機物排水単独の処理を想定し、メタン発酵の標準的な運転pH7.1での運転を当初計画に追加し、おこなった。両年度とも可溶性でんぷんを基質とし、撹拌子回転速度10 rpmおよび100 rpmで連続式実験をおこなった。実験の結果、回転速度10 rpmの緩速撹拌条件でも回転速度100 rpmの完全混合条件でも同等なメタン転換率が得られた。一方、pH7.1で得られたメタン転換率はpH6.6での転換率より低かったが、その理由は菌体収率の違いと考えられた。 最後にこれまでの回分実験の結果をうけ、ろ紙粉末を基質とし、キュプラを原料とする導電性炭化繊維布を液相部の重量パーセント0.1 %の割合で添加し、pH6.6、水理学的滞留時間8日、緩速撹拌条件で連続処理する実験を開始しており、メタン転換率は72%と炭化繊維布無添加時と同程度の転換率が得られている。 菌叢解析では上野准教授より炭化膜添加の系での解析結果が提供されており、考察が進められている。炭化繊維布の電子顕微鏡写真は、清野准教授から提供されている。
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Strategy for Future Research Activity |
バンブーレーヨンを原料とする導電性炭化繊維布を用い、ろ紙粉末を基質に用いた回分実験をおこなったところ、一次反応速度定数の増大が認められたが、その増大率は令和4年度に用いたキュプラを原料とする炭化繊維布での実験における増大率の半分程度であった。炭化繊維布の電気抵抗率はバンブーレーヨン原料の炭化繊維布では0.17 Ω・mと、キュプラ原料の炭化繊維布の0.35 Ω・mの半分程度(ただし、両方とも海水レベルの抵抗率)であり、バンブーレーヨン原料の炭化繊維布のほうが電気を通しやすい性質を有しているにもかかわらず、一次反応速度定数の増大効果が小さかった。その理由として、菌体の炭化繊維布への付着性に関係すると考え、令和6年度は各炭化繊維布の水の接触角の測定をおこない、電子顕微鏡による表面形状の観察結果とあわせ、菌体の付着性の点から考察をおこなう。 令和5年度後半よりこれまでの回分実験の結果を参考に、メタン生成速度の改善効果の高かったキュプラを原料とする炭化繊維布を液相部の重量パーセントで0.1 %の割合で添加し、ろ紙粉末を基質に、水理学的滞留時間8日、撹拌子回転速度10 rpmの緩速撹拌条件下で連続式メタン発酵実験を開始している。撹拌は順調で、現時点でのメタン転換率は72%と炭化繊維布無添加時と同程度の転換率が得られている。今後は予定通り、水理学的滞留時間を5日、3.1日と変化させることでセルロース容積負荷をあげ、その影響を調べる。 測定項目は炭化繊維布を発酵槽内に投入するため、有機物の指標としてTOCの代わりにCODCrを利用する。また固形物の指標には、VSSの代わりにSSを用いる。このほかメタン生成量等も測定する。菌叢解析は研究分担者である上野准教授に、新たに炭化繊維布の疎水性・親水性の評価指標である水との接触角測定を、従来からの研究分担者である清野准教授に引き続き依頼する。
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Causes of Carryover |
当初計画で見込んだ額より、若干安価に購入できた物品があり、次年度使用額が生じた。次年度の物品購入に使用する。
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