2023 Fiscal Year Research-status Report
水銀を指標とした年輪コア中環境汚染史の解明と森林内での動態解析
Project/Area Number |
22K04380
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
中澤 暦 富山県立大学, 工学部, 講師 (10626576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永淵 修 福岡工業大学, 附置研究所, 研究員 (30383483)
芳賀 弘和 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90432161)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水銀 / 年輪コア / 官公跡 / 火山 / 蒜山 / 北極圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
水銀は常温で液体の唯一の金属であり、環境中へは陸域・水域・大気へと放出される。水銀の大気への放出源として火山、化石燃料燃焼、バイオマス燃焼、小規模金採掘などがある。いったん放出された水銀の大気中での寿命 (fate) は 1.5年程度と言われ全球を循環する。そのため、水銀放出源付近のみならず、遠隔地 (山岳、極域) にも高濃度に沈着することがある。大気中水銀の樹木への取り込みは葉面の気孔を通じて起こり、根からの取り込みは殆どない。そのため年輪中の水銀濃度は大気中水銀濃度の変遷を保存しており環境の状態を示す試料 (プロキシ) として利用されてきた。 2023年度は、2022年度に引き続き屋久島の年輪コア中水銀濃度の変遷とその起源について検討した。特に、年輪コアの切断方法について検討を進めた。年輪コアを用いた環境汚染の変遷の評価を行うためには、任意の年数 (5年ごとなど)にカットする方法が用いられる。しかし、 屋久島の樹木は成長が遅いため、年輪は年輪幅が一般的な樹木と比較して細かく、任意の年数でカットした場合、分析機器の定量下限値を下回る可能性がある。本研究では約1cm前後の年縞でカットした (1cmサンプル) 。そのため各1cmサンプルの年縞数にバラつきが生じる (2~27年) 。同一種・同一群落から採取した複数の試料を合わせて解析するための方法の検討を行った。 さらに、鳥取大学蒜山演習林で観測した林外雨、林内雨、渓流水の解析を行い、森林内の水銀の循環について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に引き続き、屋久島で採取した年輪コアに含まれる水銀濃度の変遷とその起源についての解析を進めた。さらに、これらの解析を踏まえて、現地にて年輪の採取を行ったので、今後分析・解析を進めていく。 本年度も北極圏で年輪コアを採取した。2022年度に採取した年輪コアと合わせて分析を行い、 2024年度以降結果の解析を行っていく予定である。 また、鳥取大学蒜山演習林で観測を行った林外雨、林内雨、渓流水の分析と解析を一部進めた。中緯度地域での森林内での水銀の循環について今後さらに解析を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、屋久島で採取した年輪コアに含まれる水銀濃度の変遷とその起源についての解析を行った。統計的な解析、データの処理についてより詳細に検討した。その結果、一部の年代では近隣の火山の噴火と考えられる痕跡を見出した。島内林業活動に由来する年輪中水銀濃度の変動についてより詳細に検討するために年輪の採取を行ったため、今後分析・解析を行う。 合わせて、北極圏で採取した年輪コア他環境媒体中濃度の分析結果、鳥取大学蒜山演習林での観測結果についても詳細な検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
今年度は前年度解析したデータを再び検討することに時間を要したため、次年度使用額が生じた。2024年度は、調査と分析を精力的に進めていく予定である。
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