2022 Fiscal Year Research-status Report
建築・設備の協働による高齢者施設の感染症リスクを低減させる建築計画に関する研究
Project/Area Number |
22K04459
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷本 裕香子 東北工業大学, ライフデザイン学部, 講師 (80732776)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 理恵 東北工業大学, ライフデザイン学部, 准教授 (30466536)
石井 敏 東北工業大学, 建築学部, 教授 (90337197)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 職員行動 / 空気環境 / Covid-19 / 高齢者施設 / 協働 / 感染症 / 建築計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、高齢者施設における CO2 濃度の計測および、職員、入居者の行動観察調査を行い、人のどのような行動が空気環境に影響を与えるのか明らかにするとともに、 職員行動の指針を提示することを目的としている。 まず、調査対象施設における共同生活室と居室のCO2濃度の計測を行った。期間は2021年9月3日からの1年間である。同時に入居者については平日、休日の10分ごとの滞在場所と行為内容、職員については早番・遅番・日勤の動きと行為内容を記録した。それぞれ 2022年1月25日と8月20日、同年8月22日と28日である。次に、シミュレーションを用い、CO2 濃度の実測値の変化の要因を探った。 CO2 濃度の計測結果から、全ての月で CO2 濃度は基準値の 1000ppm を超えることがなく、必要な換気量が確保されていることがわかった。また、行動観察結果と CO2 濃度の計測結果を比較したところ、食事の時間の前後に入居者が集まり、数値が上昇傾向にあることがわかった。加えて職員の換気行為が数値に影響を与えていることがわかった。シミュレーション結果からは、共同生活室の窓際と中央では、空気の流れが異なり、人の集まる中央付近ではとくに空気が澱みやすく何らかの対策が必要であることがうかがえた。 これらの結果から、以降に記述する通り、環境工学の調査のみでは見えることのない空気 環境へ影響を与える職員の行動を把握することができた。職員は随時換気を行う傾向があったが、CO2 濃度は数センチであっても継続的な換気が効果的である可能性がある。職員の環境調整行動としては 、3 度の食事の後にCO2濃度が上がりやすいため、「食事の片付けと同時に換気する」など、介助行為と結びつけた行動計画の検討の必要性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍における高齢者施設の調査であることから、対象施設の感染状況に配慮し、多少調査日を遅らせる等の対応をした。また、調査日や作業日に研究協力者が体調を崩す等の事態も起こり、適宜、日程を再調整しながら進めていったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は当初の予定から多少遅れているが、計画の変更をするほどの遅れではない。コロナウィルス感染症も5類感染症へと移行し、これまでよりもスムーズに打ち合わせや作業が進められると考えている。 今後の進め方としては、作業が遅れている行動観察結果の分析を進めると同時にシミュレーションの活用方法について検討したいと考えている。環境工学と建築計画の研究者による打ち合わせを月に1回のペースで進め、両者の協働の成果を作っていく。以下の順に議論を進めていく。 まず、シミュレーション結果と CO2 濃度実測値の整合性の検証をする。次に、CO2 濃度の実測値と行動観察により職員の行動指針を出す。さらに、シミュレーションにより典型的ユニット平面の換気状況や窓の位置による違いがわかる動画の作成を行う。 また、既往研究より、今回の調査対象施設の CO2 濃度が低かった要因が、建物(換気設備)の新しさに関係する可能性があるため、同法人の古い施設において、現在、実験的に測定を進めている。結果によっては、古い施設における結果も追加し、この研究の知見の価値を高めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で研究がやや遅れ気味であることから、多少予算が残った。しかし来年度、状況は改善すると考えられることからあらかじめ示している研究計画に沿って調査を進めたいと考えている。残った予算についても問題なく使用できる目処が立っている。
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Research Products
(3 results)