2022 Fiscal Year Research-status Report
仮設住宅集会所「みんなの家」の再利用に見る持続可能性と創造的復興の要因
Project/Area Number |
22K04494
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末廣 香織 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80264092)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渕上 貴代 近畿大学, 産業理工学部, 助教 (30907936)
野口 雄太 福岡大学, 工学部, 助教 (40881090)
田上 健一 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (50284956)
内田 貴久 崇城大学, 工学部, 助教 (80882761)
佐藤 哲 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (90511296)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 熊本地震 / みんなの家 / 集会所 / 利活用 / 移設 |
Outline of Annual Research Achievements |
熊本地震後に建設された仮設住宅には、集会所である「みんなの家」が合計84棟建設された。これらは仮設住宅の解体に伴って、既にほとんどが移設されており、主に地域コミュニティのために再活用されつつある。ここでは、地域住民と施工者の手によってかなり自由な設計計画が行われており、非常にバラエティに富んだ結果を生んでいる。木造在来軸組工法という地域と施工者に根付いたジェネリックな構法で建設されたことが、こうした結果を導いたものと思われるが、その知見は木造仮設住宅自体の利活用にも生かせるであろう。移設の背景や仕組みはどうなっているのか、どのような計画手法があるのか、そしてこの仕組みが持つ可能性と課題を明らかにしてゆく。また、一方で2020年7月豪雨被災地で建設された木造仮設住宅についても、熊本地震からどのように変化したのかに焦点を当てて、対比的に分析する。 2022年度末現在において、84棟のうち80棟の利活用が進んでおり、そのうち4棟が現地活用、19棟が1棟のまま移築、57棟が27棟に合築されて活用されていることが分かった。その活用方法で最も多いのが、被災や老朽化で建て替えることになった地域の公民館・集会所であり、次いで新しいコミュニティ施設、防災備蓄倉庫、保育所・放課後児童クラブ等となっている。特殊なものとしては、震災ミュージアム、展望所、シェアオフィスといったものもあり、多様性に富んでいた。こうした過程では、熊本県が復興基金を原資とした十分な補助金制度を整備し、各自治体やコミュニティの負担は最小化されている。また、利活用可能になったみんなの家について県レベルで情報を共有し、仮設住宅の閉鎖後にできるだけスムーズに利活用が進む工夫がされていたことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、熊本県を始めとして各自治体に対する基礎的な調査は進めることができ、みんなの家利活用の概要は把握することができた。しかし、コロナ禍が明けきれない状況下にあって、実際に施設を訪れて、移設に関わったり、施設を利用している地域の方々へのヒアリング調査は、思うように進めることができなかった。また、移設に関わった設計者や工務店に対するヒアリングもあまり進められず、当初のスケジュールから遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度:引き続き自治会などとの関係も作りながら協力いただける住民の方々にアンケートとヒアリングを行う。それと平行して、各自治体担当者、みんなの家の移設に関与した設計者、施工者へのヒアリングを行い、再利用に至る経緯、計画やデザインの特徴などに関するデータを収集する。 また、令和2年7月豪雨の仮設住宅の供給期間は、基本的に2022年12月までである。球磨村にはトレーラーで運搬可能な木造ムービングハウスの事例があり、既に撤去されたため、ここでのみんなの家の移設についても確認する。 2024年度:上記の調査結果をまとめた後に、従前のみんなの家の状況、再利用計画やデザインの特徴、コミュニティの属性、継承された記憶の内容などにどんな特性があり、どのように関係し合っているかを明らかにし、背後にある仕組みや関係性を見いだす。今後の災害時にも応用できる研究成果は、各自治体とも共有し、被災地の支援活動を行うKASEI(九州建築学生仮設住宅環境改善)プロジェクトのウエブサイトでも公開する。 本研究チームは、KASEIのメンバーで構成されており、現地での支援活動と並行しながら研究を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍が明けきれなかった関係で、現地での調査が思うように進められず、あまり経費を使用しなかった。2022年度は、以前のように現地での調査も進められそうなので、共同研究者としっかり事前準備をして、連携しながら調査を行う予定である。
|