2022 Fiscal Year Research-status Report
Dynamism of Shareability, Inheritability and Chain Network of Traditional Living Space: About Yao-dong in China's loess plateau
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22K04497
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
栗原 伸治 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (60318384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八代 克彦 ものつくり大学, 技能工芸学部, 特別客員研究教授 (80242296)
斎尾 直子 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (80282862)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動植物 / 呼称 / 構成要素 / 建設工程 / 画像 / 映像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国黄土高原の伝統的な穴居「窰洞」の居住空間を対象に、認識論的転回と存在論的転回の両転回の共存状態における共有性・継承性・連鎖網にかかわるデータベースの作成、およびその動態について分析・表現していくことを目的にしている。そのために、2022年度は、1)空間を共有することで継承されてきた知恵とそれに関連した構成要素の抽出、および、2)空間の構成要素がなす連鎖網にかかわるデータベースの作成、にむけた準備をおこなった。 具体的には、私たちが所有する1980~1990年代に撮影された窰洞の居住空間の写真や、私たちが制作協力した2000年代のテレビ番組の映像など、これまでに蓄積してきたデータを再整理をおこなった。その際、写真は映し出された構成要素・被写体の中心・場所・対象の分類などに整理していった。映像については、表現方法からその制作の背景に対する解釈をしていった。また、窰洞の居住空間の各構成要素の呼称と建設における各工程の呼称が、それぞれ人体・動物・動物(伝説)・植物・自然素材・構築物・動詞(作業)のどれに関連したものかについても整理し集計した。 なお、これらをもとに、2023年3月には現地において予備調査を実施する予定であった。しかしながら、調査計画をたてていた2022~2023年にかけての年末年始に社会的な情勢が激変し、現地に赴くことを断念した。その代わりに、2023年3月末に、来日していた中国の農村計画学研究者をまねいて、窰洞もふくむ中国農村の伝統的な居住空間(住居空間・村落空間)と伝統的な社会集団(家族・支族)との関係に関するミニ研究会を開催した。この「中国農村ミニ研究会」をとおして、具体的な事例の現況について把握し、さらには研究の視点と方法ならびに2023年夏に実施予定の現地調査企画についても協議した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究業績の概要」にも書いたとおり、当初の計画では、2023年3月に研究代表者+分担者2名の計3名で、中国黄土高原の窰洞集落における予備調査を実施する予定であった。しかしながら、調査計画をたてていた2022~2023年にかけての年末年始に社会的な情勢が激変した。そのことにより、現地へ赴くことは断念せざるを得なくなった。そのため、現在までの進捗状況は「やや遅れている」との判断になる。 なお、この現地における予備調査の目的には、2022年度の研究計画としておこなってきたデータベース作成の準備に対して、現地で実際に確認しながら修正することにあった。そのため、データベースの作成に詳しい研究協力者1名にも同行してもらって、計4名で現地に赴きたい考えるようになった。ところが、旅費交通費の高騰等により、一人あたりの旅費交通費が2022年の春先に予定していたときの額から跳ね上がり、予算的にはきびしい状況になることが予想された。そこで、当初予定していた消耗品費や用品費としての支出をやむを得ず削り、この不足分に当てようと考えて調整した。 このように研究計画を変更しつつ、2023年3月に実施予定の現地での予備調査の計画は、2022年の年末より具体的に立てはじめた。ところが、この直後、中国への渡航が解禁になったり、ビザが発給されなくなったりと大きな変化が起きることとなり、さきがまったく見通せなくなった。そのため、2023年3月に予定していた研究代表者+分担者2名+協力者1名の計4名による現地での予備的調査の実施は、やむを得ずあきらめることにした。 以上のような経緯により、大きな金額の未使用分がでてしまうことになった。この未使用分は2023年度以降の現地調査費に充てて、現時点での「やや遅れ」を徐々に挽回していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に実施した研究成果を活かしつつ、1)空間を共有することで継承されてきた知恵とそれに関連した構成要素の抽出、および、2)空間の構成要素がなす連鎖網にかかわるデータベースの作成、にむけたさらなる準備をおこなっていく。その際、このつぎのステップとなる、3)両者それぞれの分析と総合的な動態分析、の実施方法に関しても検討をはじめる。 これらとともに、夏期休暇中に実施する現地調査の具体的な計画もたてていく。上記でしめした成果をもとに、具体的な調査候補地のなかのどこを調査対象地として、どのようなスケジュールで、どのような内容の調査をおこない、そのためにいかなる準備をおこなうか、こういったことを研究組織全員での議論をとおして決定していく。とくに研究協力者である中国の大学に勤務する研究者とは、調査の具体的な計画を詰めていく。その詳細が決定すれば、この研究協力者と協力者が所属する大学に窓口になってもらい、各種手続きをおこなう。なお、現時点では、西安を拠点として、1980~1990年代に現地調査をおこなった西安の西北部に位置する淳化県と乾県、およびおなじく1980~1990年代さらには2000年代後半にも現地調査をおこなった実績のある河南省三門峡市の窰洞集落を調査候補地にしている。 夏の現地調査のあとは、取得したデータをもとに、上記1)と2)を継続して実施する。同時に3)についても実施する。そして、抽出した構成要素や連鎖網にかかわるデータの分析とその動態分析もおこなって、これらの分析結果の表現方法についても検討していく。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、2023年3月末に研究代表者+分担者2名の計3名で、中国黄土高原での予備調査を実施する予定であった。しかし、調査計画をたてていた2022~2023年の年末年始に社会情勢が激変して、現地へ赴くことを断念せざるを得なくなった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。 具体的な経緯は以下のとおりである。この予備調査の目的を鑑みて、研究協力者1名にも同行してもらい計4名で現地に赴きたい考えていた。一方で、旅費交通費の高騰等により、予算的にはきびしい状況になることが予想された。そこで、当初予定していた物品費としての支出をやむを得ず削って、この不足分に当てようと考えた。このように研究計画を変更しつつ、年度末に実施する現地での予備調査の計画を年末より具体的に立てはじめた。ところが、この時期、中国への渡航が解禁になったりビザが発給されなくなったりと大きな変化が起きてしまい、さきがまったく見通せなくなった。そのため、2023年3月の現地での予備調査の実施は、やむを得ずあきらめることにした。 翌年度分として請求した助成金を合わせた費用については、2023年夏と2024年3月に実施する現地調査の旅費、現地調査中およびその前後で使用する機材や消耗品などの物品費、現地での調査補助や調査後のデータ整理等の補助に対する人件費・謝金として使用することを計画している。
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Research Products
(6 results)