2022 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティづくりの原点:自治省モデル・コミュニティ施策の実態と長期的再評価
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22K04501
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Research Institution | Tottori College |
Principal Investigator |
尾崎 せい子 鳥取短期大学, その他部局等, 助教 (80751768)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 茂夫 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (00396607)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | モデル・コミュニティ / コミュニティ施策 / 生活環境の施設整備 / コミュニティ活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自治省モデル・コミュニティ事業の実情を明らかにすること、さらにモデル・コミュニティ事業が50年以上経過する中で、コミュニティ施策がどのように受け継がれてきたかについて検証、そこで発現した課題を精査しつつ、今後に向けたコミュニティ再編の方法論を検討するものである。 補助事業期間における初年度の研究実績については、鳥取県におけるコミュニティ施策について、鳥取県立公文書館をはじめ国立国会図書館等に所蔵される資料を中心に、鳥取県にある3つのモデル・コミュニティ地区(義方コミュニティ地区、稲葉山地区、上井地区)について、生活環境の施設整備とコミュニティ活動について明らかにした。鳥取県の事例ではあるが、モデル・コミュニティ事業におけるモデル・コミュニティ地区の設定方法やコミュニティ計画を含めたコミュニティ施策の運用方法について、明らかにすることができた。 また、1972(昭和47)年、当時の自治省コミュニティ研究会が、2つのモデル・コミュニティ地区(大津市晴嵐コミュニティ、流山市八木南地区)を選定し、現地調査およびヒアリング調査した報告書がある。その一つ千葉県流山市八木南地区の現地調査、流山市役所へヒアリング調査を今年度は、実施することができた。当時の八木南地区では、コミュニティ・ホームと公園3か所が施設整備され、現在は2か所が現存し、そのうち1つのコミュニティ・ホームについては建替えされた。さらに3つ目のコミュニティ・ホームと公園については、現存はしているが、今後、この地域は区画整理事業が予定されていることをうけ、モデル・コミュニティ事業で整備されたコミュニティ・ホームと公園を今後どのようにするか、協議を進めることになっていることが、流山市役所のヒアリング調査でわかった。 これらが初年度における研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目的は、自治省モデル・コミュニティ施策の制度的枠組みと地方自治体の受容についてを明らかにすることである。その方法として、自治省は「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱」等の要綱・要領を作成しており、地方自治体に頒布しているが、各地方自治体がどのように咀嚼し、事業の具体化に向けてどのように取り組んだかについて、自治省の記録を整理した上で、アンケート調査を実施し具体的な取り組みを明らかにする。また先進的な取り組みを行っていた自治体については公文書を精査し、思考錯誤の様相を明らかにすることであった。 その研究課題における進捗状況については、自治省モデル・コミュニティ事業における参考文献等や、自治省が作成した報告書を精査することで、モデル・コミュニティ事業の施策を運用方法については明らかにすることができた。さらに、自治省が地方自治体に対して、「コミュニティ(近隣社会)に関する対策要綱」等の要綱・要領を作成し頒布したものを、各地方自治体がどのように取り組んだかについては、当時モデル・コミュニティ事業を実施した内容を取りまとめて刊行された参考図書をとおして、先進的な事例が整理されているを分析することができた。そのなかで、千葉県流山市八木南地区について、現地調査を実施し、流山市役所の担当課へヒアリング調査をすることができた。 自治省モデル・コミュニティ事業は、事業が実施され50年以上が経過しているが、今回の八木南地区におけるそれぞれの調査結果から、当時のモデル・コミュニティ事業を引き継ぎながらも、現在のコミュニティ施策へ引き継がれていることがわかった。 初年度における研究課題に関する進捗状況については、順調な部分(自治省モデル・コミュニティ施策の制度的枠組みを明らかにする)と遅れている部分(各地方自治体の受容について、一部の地域のみ)があるが順調に進捗していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、基本的には、交付申請に記載した研究実施計画にそって研究を遂行する。 2年目の研究活動は、コミュニティ施設の配置計画と類型化をするため、具体的な施設整備の内容において、特に重要視されたコミュニティ・センターを中心に精査する。コミュニティ・センターを拠点とした施設整備は近隣住区論の原則にあわせて行われ、それらを利用してコミュニティ活動が実施されたという見通しに立っており、本研究では、コミュニティ施設整備について、データベースを作成して全体的な設備状況を明らかにする。そのうえで、近隣住区論の六原則と照らし合わせながら類型化し、配置計画の特徴を明らかにする。 まずは、83のモデル・コミュニティ地区が所在する市町村に対して、ヒアリング調査を実施し、当時のモデル・コミュニティ事業において実施した生活環境の施設整備の資料等の有無について確認をする。またヒアリング調査等から得た施設図面を用いて空間分析も実施する。 初年度に現地調査したモデル・コミュニティ地区の実情から、交付申請に記載した研究実施計画に記載し「現地調査をうけ老朽化が予想されるコミュニティ施設に対しての耐震診断を含め性能評価または、特殊建築物等定期調査に伴う調査)を実施することを予定していたが、初年度にモデル・コミュニティ地区の現地調査を実施してみると、現存するコミュニティ施設の多くは、施設の解体後新築、改修時に耐震診断を実施、また取壊しの検討をしているモデル・コミュニティ地区が多く存在していることがわかった。今後の調査結果を含めて、これらの調査結果を整理する。 またコミュニティ活動については、自治省が刊行した各種報告書の実施内容を把握する。その上で、現状のコミュニティ活動を整理し、約50年の長い月日のなかでコミュニティ活動がどのように推移してきたのかを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
研究代表者が所属する鳥取短期大学では、2022年の冬までは新型コロナウィルス感染症による感染拡大を防ぐために出張等の自粛する要望があり、研究代表者の尾崎が担当する国立国会図書館やモデル・コミュニティ地区へのヒアリング調査および現地調査等の実施が遅れた為に、次年度使用額が生じたのが原因である。 2023年度は、新型コロナウィルス感染症が5類に変更されたことから、鳥取短期大学での出張等の業務も通常に戻ることから、交付申請に記載した研究実施計画にそって、モデル・コミュニティ地区への現地調査およびヒアリング調査等の研究を遂行することができる。
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