2023 Fiscal Year Research-status Report
フランス近代建築史における「標準」の解剖学:「量産」と「土着」の交叉の容態
Project/Area Number |
22K04509
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
千代 章一郎 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (30303853)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 標準 / 土着 / ル・コルビュジエ / シャルロット・ペリアン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「標準」を単なる「規格化」としてではなく、建築制作原理としての「ディストリブティオ」という本義に遡り、その原義が、どのような理由で、どのような方法によって、変容してきたのかを明らかにすることを大きな目標としている。そのために、主にフランス近代住宅の理論と実践を対象とし、「標準」 を歴史的に遡行するために、土着的なものに対する建築家の省察と、「量産」を用いた実践との交叉の容態を明らかにする。本年度は、まず、「標準」に関連するケーススタディとしてカプ=マルタンに構想されたル・コルビュジエのヴァカンス集合住宅構想(実現せず)を取り上げ、標準化された寸法を用いた架構が、土着の気候へ適応させる方法と分析した。都市型集合住宅とは異なって、ル・コルビュジエの理想の住まいの形式が、さまざまな変容過程を経て形成されていくことを明らかにした。一方、・コルビュジエの共同者シャルロット・ペリアンについては主に理論的な言説について分析を進め、「フォルム・リーブル」や「フォルム・ユテール」という独自の形態概念に焦点を当てることによって、これらの概念がペリアンの独自の民家調査(とりわけ、南東フランスの諸集落、 スペインのイビザ島、日本各地の民家)と矛盾各統合されていることが明らかになった。もちろんル・コルビュジエのど釈的な民家に一貫して関心を示してきたが、ル・コルビュジエとペリアンでは「土着」への眼差しは異なっている。例えば、ル・コルビュジエは西洋諸国の民家に関心を持ち続ける一方、日本の民家については表書いていない。このような差異が何に根ざしているのか、またその差異がどのような建築的実践の違いに結びついているのか。その比較研究は今後の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウクライナ戦争を受けたヨーロッパ旅行費の高騰を受け、すでに予定していた調査期間を確保できず、調査計画を再考する必要があったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きル・コルビュジエとシャルロット・ペリアンを事例とした研究分析を進める一方、両者と協働した技術者ジャン・プルーヴェについて研究成果をまとめる。
|
Causes of Carryover |
予定された出張計画が未実施のため
|