2022 Fiscal Year Research-status Report
建築材料・意匠の公告媒体としての府県連合共進会の意義と地方建築界の近代化
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22K04513
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小沢 朝江 東海大学, 建築都市学部, 教授 (70212587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 城治 郡山女子大学, 家政学部, 准教授 (70734458)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 府県連合共進会 / 林業品 / 公告機能 / 帝室林野管理局 / 大林区署 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、府県連合共進会の出展品について1次史料を収集・分析し、特に木材の出展の年代・地域傾向および関連団体による展示施設の意匠を検討した。 (1) 府県連合共進会は1881年の一府四県連合共進会を初例に計45回開催され、その出展品は一般の「審査品」と、農商務省等からの貸与や府県の特産品見本など審査対象外の「参考品」に大別される。各回の審査品目を『府県連合共進会審査復命書』『事務報告』から調査した結果、早期には輸出奨励と輸入防遏のため繭・生糸・織物・茶・紙などを主としたが、木・竹製の家具が第10回関東府県(1901)、煉瓦・瓦・セメント・漆喰が第13回関東府県 (1910)・第10回関西府県(1910) から加わったこと、木材は第12回関東府県 (1908)を初例に、第14回九州沖縄(1921)まで8回で審査が実施されたことが判明した。。 (2)木材の上記8回における府県別の出展数は、いずれも会場となった主催県は多いが、秋田県・宮崎県・長野県はこれを上回る。樹種の記載があるのは6回で、秋田県は出展2回共に杉に特化する一方、福島県は11種、長野県は20種と多く、また九州・沖縄は主要建築用材の杉・松・欅以外に、椨・椎・ヘゴなど温暖域の地場材を積極的に出展した。 (3)林業分野の参考品の出展団体として、大林区署・帝室林野管理局・三井物産株式会社が専用館を設けた点が注目できる。『事務報告』や写真帖等によると、大林区署は1908年から5回出展、製材工場や森林鉄道の整備時期と一致する。うち2回で専用館を設け、八角形平面で秋田大林区署の木材を用いた。帝室林野管理局も開局直後の1910年から2回出展、数寄屋造や各面に木曽の六木を使い分けるなど、御料林の多種材を用いてアピールした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、前半期にCOVID-19感染対策の影響で資料調査・現地調査の制限を受けたため、国立国会図書館デジタルコレクション等のアーカイブにより『府県連合共進会審査復命書』『事務報告』等の史料を収集・分析した。また各回の写真帖や絵葉書など展示館・展示方法を知る1次史料を古書等から探索し、12点を購入するなど、史料収集は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、大林区署・帝室林野管理局・三井物産株式会社の展示施設と出展背景について史料収集を進めると共に、明治末から昭和初期における地方の林産材の流通状況の変容を統計資料の分析や建築生産分野の研究者へのヒアリングにより把握する。 また、木材の出展が実施された8回の開催都市周辺を対象に、年代的に近い住宅遺構を抽出し、共進会の影響を考察する。
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Causes of Carryover |
2022年度は、前半期にCOVID-19感染対策の影響で、予定していた資料調査・現地調査の制限を受け、旅費が支出できなかった。次年度以降、調査および学会発表のための出張を予定している。
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