2022 Fiscal Year Research-status Report
ゴヒラ使いの消長からみた古代建築の構法的変化に関する実証的研究
Project/Area Number |
22K04516
|
Research Institution | Administrative Agency for Osaka City Museums |
Principal Investigator |
李 陽浩 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (10344384)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ゴヒラ材 / ゴヒラ使い / 建築技法 / 建築構造 / 台輪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、先史~古代建築に用いられたゴヒラ使い(長方形断面の材を扁平に使う手法)の事例を古代建築、考古遺物、出土部材、絵画資料などから広く収集し、その使用方法や部材的特徴を明らかにするとともに、その消長を通じて、この間における古代建築の構法的な変化を実証的に解明することを目的とする。 初年度にあたる本年度は、(1)現存建築、考古遺物、出土部材、絵画資料などにみられるゴヒラ使いの事例収集、(2)ゴヒラ使いの部材的・構造的特徴とそれが用いられた時期の検討、の2点を中心に行った。 (1)では、これまで収集したゴヒラ材のうち、家形埴輪や出土部材などにみられるゴヒラ使いの事例をピックアップするとともに、発掘調査報告書を中心として四川省の漢代崖墓や河南省の漢代明器をはじめとする東アジアの事例についても収集を行った。なお、日本における悉皆調査の一環として、登呂遺跡、富貴寺、功山寺、正福寺、円覚寺、清白寺、大善寺、長保寺、善福院などを現地踏査し、先史~古代におけるゴヒラ使いの使用箇所・使用方法と、禅宗様建築をはじめとする、その後の時代の広がりについて確認した。 (2)では、横架材の特徴を探るために、中世禅宗様建築にみられる台輪に注目し、事例を広く収集するとともに、断面形状についての検討を行った。ゴヒラ使いは古代以降にほとんど認められなくなるが、そのような中で禅宗様建築における台輪は後の時代に引き継がれるゴヒラ使いの例と考えられる。このような例をもとにゴヒラ使いの系譜と変化の痕跡を辿ることは、先史から続くゴヒラ使いの特徴を歴史的に考える上で重要と思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症予防のために日本および東アジアの建築遺構に対する実見・踏査が十分に行えなかったが、各機関が保有する報告書を中心に事例収集を進めており、ゴヒラ使いの広がりについても一定の見通しを得つつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の方法を引き続き継続することで、日本および東アジアにおけるゴヒラ使いを集成し、それらを使用箇所や部材断面の観点から考察することで、そこにみられる特徴を明らかにしたい。また、同時に時期的な消長の観点から、ゴヒラ使いの歴史的役割についても一定の展望を得ることにしたい。
|
Causes of Carryover |
予定されていた日本および海外踏査(中国・韓国)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で実施できなかったことが大きな要因のひとつである。次年度は、コロナの状況を見据えつつ、特に海外について踏査を行うことで、広い観点からゴヒラ使いの特徴を探るとともに、現地にて報告書や書籍などを含む情報収集に努めたい。
|
Research Products
(2 results)