2022 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Urban Design Principles of Small and Medium-Sized Castle Towns in Japan
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22K04524
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阿部 貴弘 日本大学, 理工学部, 教授 (90549445)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 近世城下町 / 町人地 / 設計論理 / 水系 / 地形 / 町割 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、まず、本研究で研究対象とする城下町を選定した。本研究は、城下町間の比較分析に基づきその設計論理を解き明かすことを方法論の柱としていることから、比較分析の精度を高めるため、絵図や史料が一定程度整っている城下町を選定する必要がある。そこで、近世初期の1640年代に作成された正保城絵図が現存している城下町(63城下町)を対象に、それらを立地や地形、濠や水路の状況等の観点から類型化し、各類型を代表する城下町を選定した。具体的には、特に立地に着目し、「河岸段丘型」「扇状地型」「氾濫平野型」「臨海・湖畔型」に分類し、それぞれ数都市ずつ選定した。これにより、城下町の都市構造と立地(地形)との関係、さらに濠及び水路と立地(地形)との関係が明確となり、比較分析に基づき、それらが都市設計論理にどのような影響を及ぼしたのかを読み解くことができると考える。 そのうえで、各研究対象城下町について、文献資料や考古学資料、絵図や旧版地図等の都市設計に係わる資料、関連調査や研究成果等を収集・整理するとともに、分析の最初期段階として、特に街路や水路等のインフラの整備過程に着目しながら、都市建設の過程を把握・整理した。 さらに、設計論理を読み解くための既存の方法論を適用する際の必要資料の有無や代替資料の有無等について調査検討するとともに、特に、正保城絵図をはじめとする絵図を分析に使用する際の課題等について検討した。加えて、課題解決方策の一つとして、現代の地形データに基づき微地形図を作成し、それらの代替資料としての適用可能性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、城下町間の比較分析を念頭に、立地条件や都市規模、建設年代等を考慮し、正保城絵図が現存する城下町から本研究で研究対象とする城下町を選定した。そのうえで、文献資料や考古学資料、絵図や旧版地図等の都市設計に係わる資料、関連調査や研究成果等を収集・整理し、分析の最初期段階として、特に街路や水路等のインフラの整備過程に着目しながら、都市建設の過程を把握・整理した。さらに、設計論理を読み解くための既存の方法論を適用する際の課題を抽出・整理するとともに、課題の解決方策を検討した。 なお、今後の史料調査において、研究の進展に大きな影響を及ぼすような史料の欠如などが生じた場合に備え、当初の計画よりもやや多く研究対象城下町を選定した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、過年度成果を踏まえ、まず、方法論の改良及び精緻化に取り組む。 具体的には、各研究対象城下町において、実際に課題解決方策を適用し、その妥当性を検証するとともに、その結果を踏まえ、改めて適用上の課題の把握と解決方策の検討を重ねることで、既存の方法論の改良・精緻化を図り、その汎用性をより高める。 例えば、明治期の微地形図等の近代測量図が存在しない場合、近世の絵図や文献史料、大正・昭和期の下水道整備や区画整理に伴い作成された微地形図を援用することになるが、その際、微地形図作成時点までの地形改変履歴をどのように確認し、分析に反映させるかといった点が、方法論改良のポイントとなる。また、現代の微地形図を分析に使用する際の方法論の構築についても検討する。 そのうえで、各研究対象城下町の設計論理の解明に取り組む。具体的には、改良・精緻化した方法論を用いて各城下町の設計論理を解明する。その際、比較分析を念頭に、解明できた点及び未解明な点を明確にして、各城下町の特徴がより際立つよう配慮する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が先行研究により収集した史料に基づく分析を行った結果、史料収集のための経費および旅費を削減することができたことから、次年度に使用額が生じた。 研究の進展に応じて、各研究対象城下町において、追加の史料収集のほか、現地調査等が必要になることから、経費および旅費を使用する計画である。
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