2023 Fiscal Year Research-status Report
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22K04526
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
米澤 貴紀 名城大学, 理工学部, 准教授 (40465464)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 「伊藤満作家資料」 / 大工技術資料 / 伊藤満作 / 伊藤平左衛門 / 図面 / 目録作成 / 資料のデジタル化 / 資料評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治時代に名古屋の名工として知られた伊藤満作が残した「伊藤満作家資料」(名古屋市蓬左文庫所蔵)の調査を進め、本資料の全容と、伊藤満作および本家にあたる伊藤平左衛門家の仕事を明らかにするものである。それは、本資料が作成された、明治維新前後の社会と産業の大きな変化に大工・大工家がいかに対応していったのかを示すことにつながる。具体的には、①「伊藤満作家資料」を整理、全容を明らかにし、目録を作成する、②資料中の建物を調査し、建築史の視点から資料を評価する、③伊藤満作等大工の活動を示す、の3点を目的としている。 今年度は資料の調査と調書・目録の作成と、研究協力者の協力を得ながら資料で確認できた寺社の比定と建物の建設が行われたか、行われている場合は現存の有無についての調査・整理を進めた。資料調査では、前年度確認されていたことではあるが、八世伊藤平左衛門と同家の図面が多く含まれること、また東本願寺大工・柴田家に関わる図面があることを確認した。建物の比定は順調に進み、建物の存否の分からない寺社については現地調査を行った。特に福岡県、大分県、京都府の寺社について調査を行い、大分・浄雲寺では満作の名のある棟札を確認でき、また寺に伝わる建設の経緯から遠方の伊藤家がなぜ関わったのかも判明した。 そして、前年度の成果と合わせて、2023年10月25日に徳川園ガーデンホールにて一般向けの講演を行い、本資料を所蔵する蓬左文庫のパンフレット『蓬左』に資料紹介記事を掲載した(「「伊藤満作家資料」とは」『蓬左』No.105、2023.6、「大工の図面の描き方 「伊藤満作家資料」から」『蓬左』No.106、2024.1)。また、資料で確認できる建物についてまとめ、2024年度日本建築学会大会で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目録の作成については、新たに作業協力者を得て予定よりも順調に進められている。関連遺構の確認・調査については、研究協力者の知見と、現地調査で進められている。資料のデジタル化については、当初予算よりも費用が多く掛かることが判明したため、大型資料については、本資料全体の確認を終えた上で優先順位を付けて行うこととしたため、当初予定よりは遅れているが、見当を付けられ次第取りかかれる状況にできている。資料に関連する他の大工については、引き続き研究協力者の小山興誓氏から知見の提供を受けて進めている。 以上より、資料デジタル化への取りかかりに保留分はあるが、全体としては概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2024年度は、6月を目途に資料調査を終え、その後調書の確認作業と目録の作成を進める。合わせて、関連資料の閲覧、建物の比定・存否を現地調査も含めて進める。資料のデジタル化も予算の許す限り実施し、年度末には本資料の目録、解題、研究成果を合わせた成果報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
本研究の重要目的である資料のデジタル化に係る経費が大きくなることが分かったため、特に費用の掛かる中型・大型資料については、本資料群の全体を把握し、優先順位を付けて実施することとしたため、本年度の支出分が少なくなった。また、旅費に関しては当初の計画よりも参加者を減らしたこと、また本助成によらず実施したものもあり、金額が少なくなった。 人件費については、データ整理のアルバイトの雇用を予定していたが、次年度に目録作成と合わせて業務の委託を計画したため支出しなかった。 次年度使用額については、現地調査の旅費と、目録作成のデータ整理に係る人件費・謝金を支出し、当初計画にはないが、関連機関・研究者へ配付する最終報告書(目録)の作成費にも充てる。残りは全額をデジタル化の費用として使用する。
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