2022 Fiscal Year Research-status Report
量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムの構築
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22K04530
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久谷 雄一 東北大学, 工学研究科, 准教授 (00794877)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子アニーリングコンピュータ / 流体計算 / 格子気体法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムを構築することである.次世代のコンピュータと称される量子コンピュータによる流体計算の実現は学術界だけでなく産業界においても期待されているが,実際に量子コンピュータが流体の実計算に応用された例は未だない.量子コンピュータはゲート型とアニーリング型に大別され,このうちすでに実用化されている量子アニーリングコンピュータは0と1の二値のみを扱う組合せ最適化問題に特化したマシンとなっている.そのため一般に量子アニーリングコンピュータを用いた流体計算は不可能であると考えられている.
研究期間1年目の今年度の研究実績であるが,実際に量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムの構築に至った.このとき,流体計算にかかる時間や効率については考慮せず,量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムを構築することだけに注力した.量子アニーリング計算では0と1の二値の組み合わせに対するコスト関数を定義し,このコスト関数を最小にする0と1の組み合わせを最適解として得る.そこで本研究では粒子状態を0と1のみで表現する「格子気体法」という流体計算法に着目し,格子気体法を「物理的な制約条件が与えられた0/1分布の組合せ最適化問題」として扱うことで量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムの構築を行なった.ここでの物理的な制約条件とは流体の質量と運動量の保存を意味し,この物理条件を破る粒子状態はコスト関数が増大するようにアルゴリズムを構築している.そのため,結果的に流体物理を満足する解をコスト関数を最小化する粒子状態として得ることが出来る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に構築された流体計算アルゴリズムの検証は主にシミュレーテッドアニーリング (量子アニーリング計算を従来のコンピュータ上で模擬) の形で行なっており,提案アルゴリズムが従来の格子気体法の振る舞いを再現する事が確認されている.また実際に量子アニーリングコンピュータ上でも提案アルゴリズムの実証計算が行われており,「計算効率の良否に関わらず,量子アニーリングコンピュータに実装可能な流体計算アルゴリズムを構築する」という今年度の目標は十分に達成されたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度構築に至った流体計算アルゴリズムは当初の目的通り量子アニーリングコンピュータに実装可能なものとなっており,実際に量子アニーリングコンピュータ上で提案アルゴリズムの挙動の確認も行われている.一方で,今回構築した流体計算アルゴリズムを用いた計算は決して速いものとは言えない.そのため,今後は今回の提案アルゴリズムをベースに,より高速なアルゴリズムの構築を目指す.
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Causes of Carryover |
今年度中に流体計算データを保存するためのファイルサーバーを購入する予定であったが,今のところ当初予定していたよりも実際のデータサイズが小さく抑えられているため,ファイルサーバーの購入を一旦見送り,次年度に国際学会 (APS, Annual Meeting of the Division of Fluid Dynamics) への旅費として使用予定.
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