2023 Fiscal Year Research-status Report
高感度マルチパスレーザートムソン散乱法の開発と高速衝撃波に伴う先行輻射現象の解明
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22K04534
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
葛山 浩 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (80435809)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大気圏突入 / レーザー爆轟波 / レーザートムソン散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、15 km/sを超えるような超高速の大気圏突入時に重要となる先行輻射加熱現象を解明するため、レーザートムソン散乱法(LTS)を用いて、先行輻射を伴うレーザー爆轟(LSD)波近傍の電子密度と温度を高精度で捉えること目指している。本年度は、500万画素・1 usの短露光時間のカメラと20 nsパルス幅のパルスレーザー光源を用いたシャドウグラフ計測を実施し、LSD波近傍を高分解能・高時間精度でとらえることに成功した。これにより、波面位置を正確に把握できるようになった。また、昨年度のLTS計測では、散乱光量を増やすために、プローブ光となるNd:YAGレーザーの出力を上げると、大気中でブレイクダウンが起こるため、計測不能となることが問題となっていた。そこで、二枚の円柱レンズを用いて、集光スポットの大きさを保ったまま(つまりブレイクダウンを避ける)、光量を増やす光学系に変更した。結果として、LSD波面から5 mm背後の熱平衡プラズマからの共同LTS光を捉えることに成功した。しかし、波面近傍では、迷光が強く、LTS光を捉えられていないため、さらなる工夫が必要であることがわかった。なお、この迷光は、プラズマによるプローブ光の屈折が原因と予想されるため、レーリーブロック幅を広げることで除去可能と予想している。また、LSDを駆動するCO2パルスレーザーの再現性が高く、異なるLSD駆動のLTS計測を重ね合わせて、LTS信号のS/N比を向上させることができるため、複雑なマルチパスによる信号共同増強は不要であることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学系の工夫により、LSD波面背後のレーザートムソン散乱光の計測に初めて成功した。また、LSD駆動の再現性が高く、ショットの重ね合わせでLTS信号のS/N比を向上できるため、マルチパスによる信号強度向上の必要性は薄いことも分かった。最終目的であるLSD波面前方の先行電子の補足にはまだ成功していないが、後述のトリプル分光器の回収により計測できる可能性が高く、研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
LSD波面近傍のLTS計測を行う際に、プローブ光のプラズマによる屈折が原因と予想される迷光が邪魔になることがわかった。本来、迷光は自作特殊トリプル分光器に組み込まれているレーリーブロックにより除外されるが、屈折が大きいため、ブロックしきれていない可能性が高い。幸い、LSD背後のLTS計測および前年度の分光計測からプラズマの温度が高いため、LTS信号の半値幅が広く、レーリーブロック幅を広げてもLTS信号を取得可能と予想される。そこで、幅を広げたレーリーブロックを用いて波面近傍のLTS信号の取得を行う。また、大気圧下だけでなく、ガス置換容器を製作し、その他の雰囲気ガス(希ガスを予定)下での実験も行い、連続スペクトルの影響が少ない実験条件も模索する。
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Causes of Carryover |
当初、年度中にガス置換小型チャンバーの製作(および置換用ガスポンプの購入)を予定していたが、大気中でのレーザー爆轟波近傍のレーザートムソン散乱計測が成功したため、そのデータ取得と検証を優先し、ガス置換チャンバー中での実験を後回しにした。このため、次年度使用額が生じた。現在、小型チャンバーの設計はほぼ完了しており、R6年度初頭に発注し、8月下旬に納品および実験を開始する予定である。
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Research Products
(2 results)