2022 Fiscal Year Research-status Report
行動経済学の知見に基づくプラットフォームを介したサプライチェーンに関する理論研究
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22K04585
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松林 伸生 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00385519)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サプライチェーンマネジメント / 行動経済学 / ゲーム理論 / マーケティング |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した研究実施計画を踏まえ、本年度は具体的に以下の研究成果を得ることができた。 1.ブランド力のある企業が新製品を提供するとき、消費者に他製品の品質を参照点とした認知バイアスが発生することで新製品の知覚価値に影響する「brand spillovers」(BS)を前提とした企業の意思決定問題に取り組んだ。具体的に、これまで自身が取り組んできたBSを所与として品質と価格を決定する問題について分析を追加するとともに、新たにBSの程度をコントロールできる問題をモデル化し分析した。BSのコントロールは、新製品を提供する際の製品名や広告の方法等のあり方に示唆を与えるものであり、現状は先行研究が存在しないモデル化と認識している。 結果として、既存製品の品質と、BSの発生の仕方の異なる複数の消費者セグメントの構成比率に応じて、BSの最適なレベルは大きく変わり、特に一定の条件下ではサブブランド使用のようなBSの程度を中程度にするのが最適となるという、先行研究にはない興味深い示唆を得ることができた。 2.次年度以降に予定している、営利的なプラットフォーム企業が存在するもとでのサプライチェーンマネジメントへの拡張の準備として、プラットフォーム小売企業と複数の製造業者との間で販売データを共有する提携を構築可能であるとしたときの製造業者の製品戦略について分析を行った。結果として、データ共有の提携に参加することは、参加製造業者間の価格競争の緩和効果を持ち、多くの場合においてプラットフォームの利用を利益的にする一方で、製造業者間の差別化の程度によっては、必ずしも参加が有利になるとは限らないという、興味深い示唆を得ることができた。 これらの研究成果について、1.のうちBSを所与としたモデルの分析及び2.については、現在海外学術雑誌に投稿し、いずれも要求に基づき改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において2022年度に取り組む計画であった「研究実績の概要」の1項に記載の内容に関しては、既にその一部について成果をまとめて学術雑誌に投稿し、掲載決定に向けて現在順調に改訂が進められている。また残りの内容についても、次年度に成果をまとめ、学術雑誌に投稿できる予定である。一方で2023年度から2024年度にかけて取り組む計画とした研究についても、「研究実績の概要」の2項に記載した内容については既に学術雑誌への掲載決定に向けて順調に改訂が進められている。以上により、「おおむね順調に進捗している」との自己評価に至った次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の項に記載したように、今年度の研究成果に関する論文の公刊に向けては今後とも引き続き推進していくことが不可欠である。一方で、交付申請書に記載した内容に則り、次年度についてはプラットフォーム企業が存在するもとでのサプライチェーンマネジメントの問題についてより集中的に取り組み、研究課題に関してより先端的な分析を推進していく。交付申請書の内容に変更はない。 なおいずれの場合も、本研究の大部分が研究代表者個人による机上検討であり、また随時タイムリーな情報取集・成果発表を行うべく、国内外の研究発表会への参加やインパクトの高い学術雑誌への投稿を計画すること、そしてその遂行のために大学院生を中心とする研究協力者の協力を予定していること、等についても交付申請書に記載したものから何ら変更は無い。
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Causes of Carryover |
(理由) まず、国内外で開催される学会への参加について、COVID-19の影響により制限がある状況であったことや、研究代表者が急遽、他の業務との関連により日程調整がつかなくなったこと等により、出張回数が減り旅費が大幅に未消化となった。そこで、今年度に実施できなかった成果発表については可能な限り次年度において実施したいと考える。そのために費用を繰り越して使用することとしたい。 加えて、「現在までの進捗状況」の項に記載したように、今年度に推進した研究のいくつかについてまだ論文の公刊には至っておらず、情報発信が十分でない状況である。従って、これにかかる学会発表のための旅費や論文投稿・掲載に関わる諸経費などについても次年度に繰り越して使用したいと考えている。
(使用計画)上述した成果発表に関する諸経費のほか、交付申請書に記載した次年度の研究計画については変更無いため、その実施のための費用(同じく学会発表のための旅費や論文投稿・掲載に関する経費が中心)も予定通り必要となる。
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