2022 Fiscal Year Research-status Report
感染症拡大抑制と社会・経済活動活性化を両立する社会ネットワーク形成政策
Project/Area Number |
22K04600
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
今井 哲郎 広島市立大学, 情報科学研究科, 講師 (10436173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敦 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (30236567)
藤山 英樹 獨協大学, 経済学部, 教授 (80327014)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 戦略的ネットワーク形成 / 感染症伝播抑制 / ピグー税 / 動学的ネットワーク形成ゲームモデル / 社会ネットワーク / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,感染症の拡大段階に応じて,個人の自由意志に基づく社会・経済活動のための社会ネットワーク形成と社会合理性に基づく感染症拡大抑制のための社会ネットワーク形成を,うまくバランスを取って両立させることを課題と捉え,個人利得最大化と感染症拡大抑制の効果を定量的に評価するためのモデルの確立,両者を両立させるための適切なバランスの取り方の解明,適切なバランスをもたらす望ましい社会ネットワーク構造へ誘導するための政策手法の確立,を研究目的としている. 当該年度では,以下の成果を上げた. ・社会ネットワーク形成において,各ノードが自身のネットワーク中心性を高めるという個人合理性と,ネットワーク全体の構造から導かれる感染症伝播効率を下げるという社会合理性との間のジレンマや両立可能性を検証を行うためのモデルを,以前研究代表者らによって提案された動学的ネットワーク形成ゲームモデルを用い,利得関数を適切に設定することによって作成した.また利得関数に関するパラメータの変化が生成されるネットワーク構造にどのような影響を与えるかについて,小規模のネットワーク形成シミュレーションによって検証した.研究成果は現在国際会議へ投稿中である. ・ネットワーク構造と感染症伝播の効率性をシミュレーションを用いて評価するとともに,トリガー付き社会的壺モデルによる知識発見シミュレーションモデルによって,社会ネットワーク構造の最適性の評価を行った.またこれらを両立するネットワーク構造を獲得するための探索アルゴリズムについて検討を行った. この研究成果については,2023年2月のネットワーク生態学シンポジウムにおいて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では,当該年度には1.ゲーム理論に基づく社会ネットワーク形成モデルにおけるピグー税/ピグー補助金の考え方による利得制御手法の確立,2.社会ネットワークの感染症伝播効率の評価手法の確立,の2点を進めることが挙げられていた. このうち1.については,当該年度に動学的ネットワーク形成ゲームモデルに基づく社会合理性と個人合理性の間のジレンマを表現するネットワーク形成モデルを構築した.このモデルは利得関数のパラメータ調整によって社会合理性と個人合理性の強度を制御することができるものであり,次年度に予定している定量的な制御手法の検討に繋がる成果である.また2.については,社会ネットワーク構造と感染症伝播効率の関係について,一部未だ不十分な点はあるものの,比較的計算量の小さい評価指標に関する評価・検討を実施することができた. 以上より,概ね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行は概ね順調に進んでいる. 今後は,当初の研究実施計画通り,当該年度で確立したモデルによる社会ネットワーク形成シミュレーションと感染症伝播シミュレーションを通して,適切な社会ネットワーク構造を誘導するための利得制御の強度と効果のバランスについて検証していく.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては,当初の研究実施計画で計上していた予算額に対し実際に交付された予算は大きな減額があったことから,主にシミュレーション用のワークステーションや通信機器等に関して,使用計画と額に変更があったためである. 来年度については,離れた拠点で活動する研究グループ間で連携を取るための国内旅費支出,また研究成果の発表が増えてくるため,国際会議での研究成果発表のための外国旅費および関連する諸費用の支出を予定している.
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