2022 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策の定性的・定量的分析と科学的根拠に基づく意思決定による新たな政策
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22K04606
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
勝田 忠広 明治大学, 法学部, 専任教授 (80552463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定松 淳 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (00723876)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 原子力政策 / 自然言語処理 / 福島第一原発事故 / 原子力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原発事故前後の日本のエネルギー・原子力政策の審議会に着目しAI技術、特に機械学習の援用によりその意思決定過程の構造や傾向を示した。対象は1)原子力委員会2004:内閣府原子力委員会新計画策定会議(2004年6月から2005年9月)、2) 原子力委員会2010:内閣府原子力委員会新大綱策定会議(2010年12月から2012年5月)。 1. 形態素解析:1) TF-IDF法による特徴語抽出:2つの会議とも数名の反対派委員は「再処理」「事故」といった喫緊の課題について言及するものの、多くの賛成派委員は事故後でさえ「研究」「開発」等を多用している。2) 共起ネットワークによる出現パターンの分析:「原子力委員会2004」の共起ネットワークでは、2023年現在でも実現性が不明瞭な核燃料サイクルの議論が大きな比重を占め、また「安全」の議論は多いが自然災害の予見性はない。 2. Word2Vec分析:1) 類義語の抽出:原子力委員会2004の場合、「事故」で類推される語は過去に発生した「JCO」事故や「美浜」事故であり、将来を予見するような自然現象等の語は登場しない。一方、「安全」で類推する語は「大前提」「安全規制」「確保」等で事故後の原子力委員会2010でようやく「自然災害」が登場する。2) 単語の四則演算:原子力委員会2010において、「原発+安全」という単語の足し算では「再稼働」、一方の反対派のみのモデルでは「不安」という結果となった。3) K-means法によるクラスタリング:自動でグループ化するクラスタリングを行った結果、原子力委員会2004、原子力委員会2010の両方とも殆どのグループは「運営」「目標」「実情」といった抽象的で事務的な語のグループが多い一方、反対派委員の場合「省エネルギー」「再生可能エネルギー」という選択肢を示すグループが形成された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然言語処理を用いた定量的分析は、膨大な文章を客観的に分析し課題を示すことが可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様の手法で分析を続け、その結果、科学的妥当性とみなすための「客観的指標」を導き、将来的なエネルギー政策のあり方を構築する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究取材等の困難さ、大学業務の増加による。
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