2022 Fiscal Year Research-status Report
広帯域電磁波群遅延特性を用いた金属配管異常の遠隔検査法
Project/Area Number |
22K04611
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
本島 邦行 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30272256)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 広帯域電磁波 / 金属配管検査 / 群遅延 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の金属配管異常検出試験では、計測媒体として電磁波を検査に用いることはなかった。しかし、金属配管を“電磁波用円形導波管”とすると、電磁波は金属配管内部を良好に伝搬するため、金属配管全体を対象とした異常検出法として最適な媒体である。そこで本研究テーマでは、広帯域電磁波の金属管内における群遅延特性を異常検出法として利用した。これは、広帯域電磁波の位相情報から得られる群遅延特性は、金属配管内の各所(湾曲部、分岐部など)で生じる反射波の影響を受けにくく、本研究テーマで目的とする計測方法として最適なためである。 令和4年度には、多数の分岐部を有する金属配管内の広帯域電磁波群遅延特性の基本的な解析をおこなった。そのための第一段階として、多数の分岐部を有する金属配管内を伝搬する広帯域電磁波の群遅延特性を解析した。被検査対象である金属配管の端部に計測器(ベクトルネットワークアナライザ:VNA)を接続し、両端間を伝搬する電磁波の位相特性を解析した。そして、位相情報から広帯域電磁波群遅延特性を算出した。実際の金属配管内には、電磁波の反射を生じる分岐が多数存在するが、それらが群遅延特性に及ぼす影響について定量的に評価した。これは、異常が存在しない場合であっても、金属配管内の電磁波群遅延特性がどれほど影響を受けるかを解明することが目的であり、金属配管の異常の有無を判定する基礎データとした。 また、金属配管の異常判定を正確かつ客観的に評価するために、統計学的な判定方法を導入した。これは、正常な金属配管を多数用意して多くの正常値データを取得しておき、統計的判定方法として3σ法とHampel Identifier法を導入することで、ロバスト性の高い異常判定をおこなった。そしてこれらの統計的手法をプログラム化し、効率的に異常判定がおこなえる実験環境を構築した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究実施計画では、多数の分岐部を有する金属配管内の広帯域電磁波群遅延特性の解析であるが、予定していた研究内容はほぼ実施済である。本研究テーマでは、広帯域電磁波伝搬を用いて位相特性を計測し、そこから群遅延特性を算出することで金属配管の異常を検出するが、その群遅延特性算出のための自作プログラムに誤りがあることが発覚した。これは、広帯域電磁波の位相が+πから-πに遷移する場合における積算位相計算が正確に行われていなかったことが原因であった。そこで、計測周波数間隔(周波数サンプリング間隔)を狭くして正確に位相遷移のタイミングをとらえるようにした。このためには、計測器(ベクトルネットワークアナライザ)の計測点数を超えた測定が必要であったが、広帯域周波数を複数の周波数帯域に分割し、各々の周波数帯域で最大計測点数で測定し、後処理で1つの計測データとしてまとめることで解決した。 また、本研究テーマ申請時には予定していなかったが、金属配管の異常判定を正確かつ客観的に行うために統計的手法を導入した。そのためのプログラム開発をおこない、適切な有意水準を決めることで数学的に根拠のある異常判定が行えるようになった。しかし、この高精度な異常判定方法の導入により、以前から使用していた金属配管の真円度が不足していることが判明した。その対応は令和5年度に行う予定であるが、研究計画の当初案に盛り込まれていなかったが、当初予定していた令和5年度の研究実施計画には影響を与えない見込みである。 以上のように、データ解析上の問題が発覚したが計測方法を工夫し、解析用プログラムを修正することで当初予定していた研究内容が、ほぼ順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究テーマの申請内容に沿って予定通りに研究を進める。 令和5年度に、金属配管内に異常が存在する場合の広帯域電磁波群遅延特性の解析を行う予定である。金属配管の異常として、異物(金属製異物(欠落部品等)、絶縁性異物(配管内部に析出した水垢等))、変形(外力による金属管の潰れ、経年変形)、配管接続部の緩み、き裂(腐食等による穴あき)を想定している。これらによって、金属配管の遮断周波数変化や金属管内における波長短縮率の変化、特定周波数における位相変化などが生じるが、それらを広帯域電磁波群遅延特性変化として計測する。そして、これらの変化と令和4年度の研究結果で得られた金属配管正常時における群遅延特性を比較することで、異常検出の可能性を検証する。さらに、異常の程度(異物の大きさや範囲、変形量、き裂サイズ)による検出精度の評価も行う。 そして令和6年度には、本手法における金属配管異常検出精度の評価と高感度化を行う予定である。これは、本計測法における金属配管異常検出精度の評価であり、金属配管長が異常検出感度に及ぼす影響の評価と、配管に存在する分岐部による検出感度の低下を評価する。また、検出可能な異物やき裂サイズの評価も行う。ここでは、令和4年度に導入した統計学的な異常判定方法が効果を発揮することが期待できる。さらに、金属配管異常検出の高感度化のために、異常検出に最適な金属管内電磁波伝搬モードの検討や、最適な計測周波数帯域の検討も行う。
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画では、以前購入して古くなってきた校正キット(キャリブレーションキット)を新しく購入する予定であった。今年度の所要額の大きな部分はそのための予算であった。ところが、統計的手法を導入して金属配管の異常判定を正確に行うため、多数の正常な金属配管の計測を開始したところ、実験に使っていた正常な金属配管では真円度が不十分であることが判明し、これが計測精度に大きな影響を与えていた。そこで、当初予定していた校正キットの購入費を、真円度の高い金属管を多数購入する予算に振り替えた。また、それによって特注で製作した矩形円形変換器も新たに作り直す必要が生じた。しかし、特注品の新たな矩形円形変換器は作製する業者との打ち合わせ・製作に時間がかかるため、令和5年度の発注・納入予定となってしまったことにより次年度の使用額が生じた。
|
Research Products
(4 results)