2022 Fiscal Year Research-status Report
抱っこ紐歩行時における幼児の物理現象の解明と理論モデルの構築
Project/Area Number |
22K04620
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
大田 慎一郎 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (90550393)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 幼児 / 抱っこ紐 / 振動 / 歩行 / 振動モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
抱っこ紐使用時における歩行者,および幼児の物理現象を把握する必要がある.この現象を検討する上で,まず幼児の物理的特性として質量や慣性モーメントが考慮され,その他の力学パラメータが容易に測定可能なダミーを用いて,抱っこ紐―幼児ダミー系の加速度ど物理現象を測定実験により明らかにする.幼児ダミーと歩行者にジャイロセンサをを設置し,物理現象を詳細に調べる.このジャイロセンサにより,歩行者の加速度や角度と幼児ダミー各部を比較することで,歩行が幼児へ与える影響度を把握することが可能となる. 上記測定システムを用いて,抱っこ紐と幼児ダミーを使用して加振器を用いた加振実験と異なる速度により歩行を行う歩行実験の2つの計測実験を行った.実験では,3軸ジャイロセンサを用いて幼児ダミーの頭部と腰部,加振実験では被験者の左肩と加振器上部,歩行実験では被験者の左肩と腹部の4か所の加速度の測定を行った.使用した抱っこ紐は,横向きに抱っこするスリングタイプと縦向きに抱っこするキャリアタイプの2種類である.幼児ダミーは,新生児から生後3か月を想定した3kgと5kgの2種類を使用した.加振実験では,1~5Hzの周波数帯での計測を行った.また,歩行実験で用いた歩行速度は70BPMと90BPMである. その結果,振動実験では抱っこ紐と幼児ダミーの違いによらず1~2Hz付近では加振器上と被験者,被験者と幼児ダミーの各計測点での加速度振幅を比較すると,その変化は0.01mm以下であり抱っこ紐による振動の増幅は見られなかった.しかし,周波数帯が2Hzより大きくなると加速度振幅の増幅が確認できた.歩行実験では,計測された加速度振幅は70BPMでは1.2Hzで90BPMでは1.5Hzでピークが表れており,歩行周期の影響を強く受けていることが確認された.特に歩行速度や歩行の特徴の違いにより,スリングタイプでは前後方向,キャリアタイプでは横方向への幼児の首の振動低減の重要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた測定実験は完了しており,測定実験に関する成果発表を予定している.
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Strategy for Future Research Activity |
幼児―抱っこ紐系における理論モデルの構築を実施する. 幼児ダミー実験で把握した物理現象を再現可能な理論モデルを構築し,数値解析を解析する.この理論モデルにおいて,幼児の柔らかさを考慮した頸関節モデルと剛体リンクを組み合わせ,幼児の運動を再現することを目指す.測定実験に基づき,頸部等における未知の力学パラメータを同定し,測定結果と比較することで理論モデルおよび,計算手法の妥当性を検証する予定である.
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Causes of Carryover |
当初ひずみゲージの測定システムを検討していたが,高精度な加速度センサを購入した方が,幼児の精密な計測が可能であることがわかったため,購入を中止した.したがって,今後,加速度センサ等を追加で選定し,購入する予定である. また,新型コロナの影響で予定していた講演会へ参加することができなかったので,旅費を執行することができなかった.今年度より,積極的に研究成果を公表する予定である.
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