2022 Fiscal Year Research-status Report
機能性ポーラス構造部材を用いた高気密空間内水素ガス爆発事故被害軽減法の高性能化
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22K04622
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉藤 寛泰 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (80362284)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 爆発圧力緩和 / 水素ガス爆発 / 減災システム / ポーラス体 / 消炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,課題1として設定した「機能性ポーラス構造体を用いた高気密空間内の水素ガス爆発圧力の抑制」について検証実験を行った.これまで,粒子表面におけるガス吸着性がないガラスビーズ等固体粒子の充填層を密閉空間内壁に設けた際の爆発圧力緩和性能を調べ,音速未満の爆燃波・音速を超える爆轟波ともに,充填ガラスビーズ直径が消炎の可否に影響を及ぼすことを確認してきた.しかしながら,爆燃波の場合,ガラスビーズの充填により,同一体積における爆発過圧力のピークは下げられるものの,圧力上昇の立ち上がりは極めて急峻となり,これが問題であった.そこで,粒子表面や内部に細孔(消炎距離よりもかなり小さいスケールであり,火炎は内部へ侵入できないはずである)を有するほぼ同じ粒径の活性アルミナボールを用いて同様の実験を実施した結果,爆発過圧力のピークが減少し,かつ,圧力の立ち上がりが鈍化し,最大圧力上昇速度(圧力の時間変化の傾きが最も大きくなるときの上昇速度)はかなり減少することが明らかとなった.現時点では,その爆発圧力の緩和メカニズムについての詳細は明らかではないが,爆発火炎の拡がりとともに生じる火炎周囲の未燃混合気の圧力上昇により,粒子間の微細空隙へ未燃混合気が押し込まれる効果に加え,粒子表面や内部の細孔への気体の押し込みによる隔離も発生し,爆発に寄与する混合気量が減少したためではないかと推測している.爆発終了後の密閉空間内の残圧から,活性アルミナボールを用いた条件では未燃混合気量が多いこと判明している.これらの実験事実は,単なる剛体球ではなく,機能性粒子を用いることで爆発圧力の緩和をより効果的に行えることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高気密空間内で生じる可燃性ガス爆発の爆発圧力を,粒子充填層の設置により緩和する手法の確立を目的としている.粒子の選定には,様々な種類,サイズのものが存在し,どのような粒子を用いるのが爆発圧力の緩和に最も効果的かは,トライアル&エラーによるところが大きく,検証条件が相当数になる予想であった.しかしながら,粒子表面・内部の細孔の効果を期待して選定した活性アルミナボールが極めて有効あることが早期に判明し,ポーラス構造体の候補を一つ選定することができたことは,大きな進展であると捉えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ガラスビーズ,スチールボールなどに比べ,機能性粒子である活性アルミナボールの爆発圧力緩和能力が高いことが認められた.今後の研究では,まず,この活性アルミナボールに対して,より広範な条件で爆燃波,爆轟波を入射させ,爆発圧力緩和と消炎に対する限界条件を明らかにする予定である.また,複雑な火炎伝ぱと消炎メカニズムの解明には,活性アルミナボール充填区間内の火炎伝ぱ現象を可視化することが必要であり,新たにガラス製の配管実験装置の設計,製作を予定している.
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Causes of Carryover |
爆発圧力の緩和性能の高い粒子を選定するため,多種の機能性ポーラス構造部材の購入を予定していたが,活性アルミナボールが有効であることが研究の早期段階でわかり,他の粒子購入を一旦止めたためである.次年度において,より詳細に現象観測が可能な装置の設計,製作を予定しており,その経費として使用予定である.
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Research Products
(1 results)