2022 Fiscal Year Research-status Report
Understanding of actual situations of inundation disasters and characteristics of runoff and flow over land in urban areas with small rivers
Project/Area Number |
22K04640
|
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
三上 貴仁 東京都市大学, 建築都市デザイン学部, 准教授 (80732198)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 浸水災害 / 市街地 / 氾濫特性 / 令和元年東日本台風 |
Outline of Annual Research Achievements |
小河川を有する市街地における浸水災害の実態を明らかにするために、世田谷区と大田区の境に位置し多摩川、谷沢川、丸子川の3つの川に囲まれた地域で、令和元年東日本台風(2019年台風19号、Hagibis)による大雨によって発生した浸水災害について、さまざまなデータを基に分析を行った。特に、対象地域内の様子を記録した防犯カメラの映像を分析し、浸水災害時の浸水の進行や人々の行動の特徴の把握を試みた。浸水の進行については、浸水深の時間変化や流れの発生状況を把握することができた。浸水の進行の詳細な時間発展を記録したデータは貴重であり、これらのデータは、住民目線での地域の具体的な氾濫特性の理解を進めるとともに、浸水・氾濫の数値シミュレーションの検証等にも役立てることができると考えられる。人々の行動に関しては、自動車や歩行者の往来状況や浸水中の歩行速度を把握することができた。過去の他地域での災害や実験による検討で得られた知見を参考にすると、対象とした交差点では自動車も歩行者も移動が危険となる浸水状況に至っていたと考えられることがわかった。 加えて、降雨流出氾濫モデル(RRIモデル)とiRICソフトウェアの中の氾濫解析ツール(Nays2DFlood)を用いて、令和元年東日本台風の際の多摩川流域での降雨分布が、浸水災害が生じた多摩川下流域での流量・水位変化に与えた影響についても分析した。流域全体を源流域、上流域、中流域、下流域の4つの地域に分割し、それぞれの地域に降った降雨の影響を調べたところ、下流域での流量は、中流域と下流域への降雨の影響で上昇しはじめ、その後、源流域から中流域への降雨による流量増大のピークが重なったことで大きくなっていたことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、令和元年東日本台風の際の市街地での浸水災害の実例を詳しく分析することで、市街地での浸水の進行や人々の行動について明らかにすることができた。その成果については、学術誌に投稿し掲載にまで至ることができた。加えて、流出と氾濫に関する数値モデルを用いて、この浸水災害を引き起こした要因の一つである、多摩川での流量・水位の記録的な上昇が、どのような降雨によってもたらされたのかについても把握することができた。こちらの結果の一部は学会発表につなげることができた。以上より、当初の計画を踏まえておおむね順調に進展したと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、市街地での氾濫特性について詳細に検討できるようにするための数値シミュレーション手法について検討を進めていく予定である。iRICソフトウェアの中の氾濫解析ツール(Nays2DFlood)を用いて、市街地の特徴である密集した建物、さまざまな幅の道路、各建物が有する地下空間といった情報を反映させた氾濫解析を行うことができる手法を構築する。具体的には、氾濫解析の計算格子に建物の密集度合いと道路のデータを反映しすることで、建物による氾濫の阻害や道路を介した氾濫の進行が表現されるようにする。市街地の情報を反映させる際には、国土数値情報、基盤地図情報、OpenStreetMapといったwebで入手可能なオープンデータを利用することで、他の市街地にも適用可能な手法となるようにする。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が所属機関をうつることとなり、当初計画していた実地での観測の充実ではなく、数値シミュレーション手法の構築に注力することとしたため、そのための費用を次年度に繰り越した。
|
Research Products
(2 results)