2022 Fiscal Year Research-status Report
複合電子顕微分光による窒化アルミニウム蛍光体の発光メカニズム解明
Project/Area Number |
22K04684
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 元貴 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00749278)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 蛍光体 / カソードルミネッセンス / 窒化アルミニウム / ドーパント |
Outline of Annual Research Achievements |
白色LEDは青色または近紫外LEDと蛍光体を組み合わせて実現することが多く、化学的に安定なAlNに希土類をドープした蛍光体材料の開発が近年進められている。本研究では、AlNを起点物質として、酸素、カーボン、Si、Euをドープした新しいAlN基蛍光体の燃焼合成、および複合電子顕微分光を用いた発光メカニズムの解明を目的とした。
2022年度は、カーボンを含まないAlN-O-Eu系、AlN-O-Si-Eu系の蛍光体材料を燃焼合成し、これらの特性や発光メカニズムの解明を試みた。AlNにEuを添加して燃焼合成を行うと緑色の発光を示す試料が得られたが、TEM-EDS分析の結果、EuはAlN粒内部にはドープされず、粒界に酸化物として存在した。EuとSiを共添加したAlNは、粒内にEu、Si、Oを含む層が形成したポリタイプであり、STEM観察から、Euは極性の反転によってできる面欠陥中のNサイトに2価でドープされていることがわかった。Euに配位するイオンの対称性やEuとイオン間の距離により強い青色発光を示すことがわかった。
AlNとほかの結晶との固溶体にEuを合成できれば、固溶量の調整により発光特性を幅広く調整可能な蛍光体が実現できる可能性がある。そこで、カーボンをドープしたAlN-Al2OC系およびAlN-SiC系固溶体の燃焼合成を試みた。カーボン源として原料に黒鉛またはSiCを添加して燃焼合成を行ったが、発光特性に優れた蛍光体は得られなかった。黒鉛を添加した場合は蒸発や酸化物の還元が生じる可能性があり、SiCは反応性が低かった可能性がある。今後、熱力学的な検討を行い、最適なカーボンやSi供給源、反応温度を探索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていたカーボンを含まないAlN-O-Eu系、AlN-O-Si-Eu系の蛍光体材料を燃焼合成し、STEM像観察およびEELSによりEuの侵入サイトや電子状態の解析を行うことができた。さらに、位置により発光波長が変化する可能性が示されるなど、有用な知見が得られたため。得られた結果に基づき、新規材料開発に向けた探索が引き続き必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
燃焼合成したEu、Si添加AlN蛍光体をSTEMカソードルミネッセンス法により分析すると、1つの蛍光体粒子内であっても、発光スペクトルが変化する可能性が示唆された。これは、Euの配位環境の違いに起因すると考えられるため、その原因を今後検討する。
また、Eu、Si、Oのドープ量によっても発光特性が変化する可能性があるため、今後組成を変化させた材料を合成し、その発光特性を調査する予定である。
当初の目的の一つであったAlN系の固溶体の合成にも引き続き取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
想定よりも少ない実験回数でEu、Si添加AlN蛍光体の合成に成功したため、未使用額が生じた。一方で、AlN基固溶体の合成には未だ改善が必要であり、新たに組成を変化させた材料の合成が必要となったため、未使用額はこれらの実験のために使用する予定である。
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