2023 Fiscal Year Research-status Report
ダブルペロブスカイト型複合酸化物を基材とする新しい着色無機顔料の開発
Project/Area Number |
22K04698
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
増井 敏行 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00304006)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ダブルペロブスカイト / 無機顔料 / 色材 / 赤色 / 複合酸化物 / 配位子場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
色材である無機顔料において有害元素を含む従来のものから,安全な物質かつ安全なプロセスで合成された材料へ転換する機運が高まっている.本研究ではダブルペロブスカイト型金属複合酸化物を母体とし,発色源となるイオンを固溶させて組成や結晶場を制御することで,安全な物質とプロセスで多彩な色を発現する新規酸化物系無機顔料の開発を目指した. 令和5年度は,新規な赤色無機顔料の開発を目指し,発色源としてCo2+に着目した.Co2+は八面体配位されたサイトに固溶すると,d-d遷移により緑色光(波長490~560 nm)を吸収するため,赤色の発色が期待できる.そこで,ダブルペロブスカイト型構造のCa2MgWO6を母材料に選択し,Mg2+サイトにCo2+を固溶させたCa2Mg1-xCoxWO6(0 < x < 0.50)を合成したところ,試料は薄橙色を呈した.さらに,Co2+濃度の増大に伴ってd-d遷移による光吸収が強まり,試料色は次第に褐色へと変化した.これらのうち,薄橙色を呈したCa2Mg1-xCoxWO6(0.10 < x < 0.30)試料に工夫を加えれば,赤色を呈する試料が得られるのではないかと考え,W6+サイトへのMo6+の固溶を検討した.そこでCa2Mg1-xCoxW1-yMoyO6(0.10 < x < 0.30; 0.45 < y < 0.60)を合成し,その色彩を評価した. 合成した試料のうち,Ca2Mg0.85Co0.15W1-yMoyO6(0.45 < y < 0.60)が高い赤色度を示した.これにMo6+を固溶させると,Co3dのeg軌道及びW5d軌道からなる伝導帯にMo4d軌道が混成してバンドギャップが小さくなり,より長波長側の光を吸収した.これにより試料色は赤褐色から暗赤色へと変化した.合成した試料の中で,y = 0.50の試料が最も赤色に近くなることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な着色無機顔料として,令和5年度にダブルペロブスカイト型構造のBa2RE1-xCexTaO6(RE = La, Gd, Y, 0 < x < 1)、令和6年度にCa2Mg1-xCoxW1-yMoyO6(0.10 < x < 0.30; 0.45 < y < 0.60)を合成した.発色イオンの受ける結晶場の強さやバンドギャップエネルギーを調節することにより,色調を制御可能であることを明らかにした.今後,アルカリ土類金属の種類や組成を制御することによって,異なる色調や高い彩度が得られることが期待される.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り,アルカリ土類金属のBa,Sr,Caの組み合わせや組成を変えた試料について同様に合成し,顔料の発色が最大となるように顔料の組成を最適化する.さらに,最適化された組成において,顔料の紫外可視近赤外分光反射率と色座標から,色彩の鮮やかさを示す彩度や色の純度を示す色相角を定量的に評価し,現在実用化されている黄鉛(PbCrO4),カドミウムレッド(CdS・CdSe),バーミリオン(HgS),鉛丹(Pb3O4)などとの比較検討を行う.
|