2022 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属の層状複水酸化物を正極とした新しい電気化学デバイスの材料設計と創製
Project/Area Number |
22K04702
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
村田 秀信 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (30726287)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 層状複水酸化物 / インターカレーション / 再水和 / X線吸収分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ni-Al層状複水酸化物(LDH)に関して、水熱ホットプレス法を用いて物性測定に使用する緻密体の作製方法を確立した。溶媒として水ではなく、水酸化ナトリウム水溶液を使用することが重要であり、相対密度で90 wt%を超える緻密体が得られた。これらの緻密体は、厚み方向にLDHの層間方向(c軸方向)が揃うように選択配向していた。 得られたLDH緻密体の熱処理を試みたところ、昇温速度を制御することにより、緻密体を破壊することなく、層間イオンと水酸化物イオンを脱離させることに成功した。これは作製したLDH緻密体において、層間イオンの移動が可能なことを示している。また、このとき、緻密体は異方的な収縮を示し、厚み方向に大きく収縮した。層間イオンと水酸化物イオンの脱離後は、結晶性の低い岩塩構造に変化するとともに選択配向が解消されることが観察された。このとき水酸化物層を構成するNiとAlの局所環境にも変化が生じていることがX線吸収分光法によって明らかになった。さらに再水和処理を行うと水酸化物イオンよりも炭酸イオンが多く層間に導入されることが明らかになり、緻密体においても層間イオンの挿入脱離が可能であることが実証された。 予備的な段階ながら、試作した電気化学デバイスにおいても、電流の流れる方向に極性が見られ、イオンの挿入脱離に伴う反応が起こっていること可能性が示された。また、結晶構造に関する考察により、層間に導入可能な物質の量には限界があるため、層間で伝導キャリアを担う物質が層間イオンやプロトン、水酸化物イオンで変化しうることが示唆された。これらの結果は高機能正極の設計につながる知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物性測定に使用するための緻密体の作製法の確立、その緻密体を用いた層間イオンの挿入脱離の確認、予備実験段階ながら電気化学デバイスの作製、電気化学デバイスとしての指針となる結晶学的知見等、当初の目的を概ね達成する成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に作製法を確立したNi-Al LDH緻密体を用いた電気化学デバイスの試作・改良を行うとともに、Ni-Al LDH緻密体に関する基礎物性評価として、交流インピーダンス法を用いた導電率評価を行う。また、今年度に示唆されたNi/Al比が伝導キャリアに与える影響に関して解析を進め、層間イオンと水酸化物イオン/水素イオンのどちらが伝導キャリアとなるかの制御を試みる。 また、理論的解析においては、第一原理計算や情報科学的手法を用いて、Ni-Al以外の陽イオンの組み合わせについても検討を進め高機能正極を決める適切な特徴量のセットを明らかにすることを目指すとともに、得られた結果を実験にフィードバックして、優れた性能を示す電気化学デバイスの創製を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症による影響が長引いており、当初予定していた学会参加等の出張を取りやめたため、当初想定した旅費を大幅に下回った。装置の修理も発生したため、一部を物品費やその他として利用したが、残額は翌年度に構築する電気化学測定系に充てることとした。
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