2022 Fiscal Year Research-status Report
電子メディエーターを用いたフッ素ポリマーの新規表面改質法の開発
Project/Area Number |
22K04728
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石松 亮一 九州大学, 工学研究院, 助教 (90512781)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ラジカルアニオン / 酸化還元電位 / フッ素ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の表面に存在するフッ素は、電気化学的に、約-2 V vs SCE程度で還元脱離することが知られている。したがって、これより負に大きな還元電位を持つ有機化合物のラジカルアニオンを電極反応で生成し、これを電子メディエーターとして用いることによって、表面処理が可能である。PTFEの表面処理で一般的に用いられる金属ナトリウムを含む処理剤は負に還元電位が大きく(したがって非常に反応性が高く)、PTFEの表面処理は数秒で完了するが、処理時間の増加とともに表面粗さの増加や、処理層の剥離が起こる。そこで、よりマイルドな条件で行うことによって、表面処理をより精密に制御できると考えた。本年度では、、-2.1 vs SCE程度の還元電位を持つピレンからピレンのラジカルアニオンをバルク電解で発生させ、これを電子メディエーターとして用いることによってPTFEの表面処理を行った。 PTFE片をピレンのラジカルアニオンが生成する電解槽に投入し、ピレンの電気化学的な還元を行ったところ、PTFE片が黒色に変化した。FTIR測定を行い、この変色したPTFEの表面に存在する官能基を調べたところ、C-F結合の伸縮振動に由来するピークの減少と、様々な官能基に由来するピークが新たに出現することが確認された。さらにESR測定を行ったところ、ラジカルに起因する吸収ピークが観測された。これらの測定からPTFE表面に存在するフッ素が、ピレンのラジカルカチオンによって還元脱離することが分かった。また濃度依存性についても確認を行い、高濃度においては、表面処理が促進されることも示した。なお、-1.9 vs SCE程度の還元電位を持つジフェニルアントラセンを電子メディエーターに用いた場合には、PTFE片の変色は起こらなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書で初年度に予定した、電子メディエーターのPTFE処理における還元電位依存性について確認し、さらに濃度依存性についても確認している。したがって、おおよそ計画通りに研究が進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
表面処理後のさらなる表面解析を行う。具体的には、SEM観察によるモルフォルジ―変化の測定や、水との接触角測定による表面の親水性の変化の程度の見積もり、金属やポリマーとの接着性や結合エネルギーの算出を行う。これらの測定によって、PTFEと他の材料との接着性向上を目指した、電子メディエーターを使った処理による表面改質の指針を確立する。さらに、より負に大きな還元電位を持つ有機化合物を使用し、電子メディエーターの還元電位が表面処理に与える影響について明らかにする。
|
Causes of Carryover |
当初、初年度に電解を行うポテンショスタット/ガルバノスタットの購入と、窒素雰囲気下で実験を行うため、簡易のグローブボックスを購入する予定であった。しかしながら、年度途中に他大学へ転出することが決まったので、次年度以降に購入することにした。研究に必要なポテンショ/ガルバのスタットと、簡易グローブボックスは、九州大学工学部に設置された装置を使用することによって、研究を進めた。
|