2022 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication and Mechanical Properties of Electrodeposited Films with Various Periodic High-Composition Gradient Structures
Project/Area Number |
22K04729
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
兼子 佳久 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (40283098)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 電気めっき / 傾斜組成 / 硬さ / 積層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の初年度ある令和4年度は,新しい合金系について周期的傾斜構造膜を成膜すること,および新たな電位波形で周期的傾斜構造膜を作成することを試みた。 まず新しい合金系では,Cr-Co系合金の周期的傾斜組成膜の成膜を実施した。めっき液には3価クロムめっきが可能な塩化クロムと硫酸コバルトを含む電解液を用いた。この電解液を用いた電気めっきでは析出物の組成は電位に依存するので,電位を連続的に変化させるとことで,傾斜組成を有する合金膜を成膜することができる。まず,種々の一定電位でCu基板上にCr-Co合金を成膜し,析出物をSEM/EDS法で分析した。EDS分析の結果,合金膜中のCr濃度はめっき時のカソード電位が増加するにつれてほぼ線形的に増加することを確認した。その電位と析出物組成との関係を近似し,めっきプログラムに組み込んで,長周期の傾斜組成Cr-Co合金膜の成膜を試みた。その後FIB加工で断面を露出させ,SEM/EDS法で面分析した結果,Cr成分が連続的に変化していたことを確認した。 また,NiとCuの濃度が同程度のNi-Cu合金膜めっきでは,一定電位条件ではデンドライト状の組織が成長し,凹凸の激しい表面性状となってしまう。これの問題を解決するために,パルスめっきによる一浴式のNi-rich層とCu層の選択的な析出を目指した。パルスめっきでは核生成サイトが数多く形成されるので,比較的平滑な表面性状が期待できる。本課題ではNi-rich層を析出させるパルスとCu層のそれを組み合わせて任意の組成を有する合金膜の生成を試みる。Ni-rich層パルスとCu層パルスを種々に変化させたパルスめっきではNi-rich層パルス比に依存して,合金膜の組成が変化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度から本課題は開始したが,従来の電位を連続的に変化させる傾斜組成膜にめっきに加えて,異なる電位のパルスを組みあせたパルスめっきによる周期的傾斜組成膜めっきを発案し,検証を開始している。これは全く新規の周期的傾斜組成膜めっき法なので,まずはパルスめっきによって成膜される合金の組成のパルス電位依存性と析出量のパルス回数依存性を調査した。これらの結果をもとに,二種類のパルスの比を連続的に変化させることで,任意の濃度勾配の合金膜が得られると期待される。まずは,本年度の予備的な検討では,Cu-Ni濃度勾配合金膜の成膜の可能性を示すことができた。 また,従来の取り組んできた連続的に電位を変化させる成膜法の対象には,Cr-Co合金を選択した。本年度は,まずは析出物の電位依存性の取得と,それをもとに長周期のCr-Co傾斜組成膜の生成を確認できた。このように,Cr-Co合金についても周期的傾斜組成膜の成膜が成功しており研究の進捗は順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
組合せパルスめっきによる傾斜組成Ni-Cu合金膜の作製については,任意のNi組成を析出させるパルス比を生成するアルゴリズムをめっき用プログラムに組み込む必要がある。メインのプログラムは完成しているので,プログラム内に別モジュールを設定し,実装する予定である。実際に長周期のものを成膜し,その断面をSEM/EDS法で分析し傾斜組成の有無を確認する。その後,種々の濃度勾配,濃度振幅,平均濃度の傾斜組成Ni-Cu合金膜を作製し,その硬さを評価する。さらに,Ni-Co-Cu/Cu系についても組合せパルスめっき法で傾斜組成膜の成膜を試みる。 Cr-Co系については,電解液の安定性の問題が依然残されている。合金組成の電位依存性計測,プログラムへの実装,傾斜組成膜作製を一続きの作業としてプロトコル化し,より安定的に傾斜組成Cr-Co合金膜を成膜できるようにする。さらに,傾斜組成膜と均一な合金膜や多層膜と硬さを比較し,より強度特性が優れた微視的形態を明らかにする。さらに,Cr-Co系については多層膜を含めて摩耗試験を実施し,その実用性を検討する。
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