2022 Fiscal Year Research-status Report
セルロース/リムーバブルジカルボン酸複合体を用いた環境適応型マイクロビーズの開発
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22K04752
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Research Institution | Kumamoto Industrial Research Institute |
Principal Investigator |
城崎 智洋 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 室長 (70554054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
龍 直哉 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (90743641)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セルロース / マイクロビーズ / マイクロプラスチック / ジカルボン酸 / 溶解性セルロース / エステル化反応 / プラスチックフリー / 脱着 |
Outline of Annual Research Achievements |
リムーバルなジカルボン酸誘導体の脱着を利用することによってセルロースの溶解性を制御し、プラスチックフリー社会に適合した、石油由来のプラスチックマイクロビーズの代替となるセルロースマイクロビーズを調製する技術を確立することを目的としている。 本年度は、目標1として、「ジカルボン酸化セルロースのラインナップ化合成」を挙げており、原料となるセルロースとして、市販の微小繊維状セルロース、老成処理した微小繊維状セルロース、酸処理して非結晶性部位を除いた結晶セルロースを原料として、ジカルボン酸化反応を検討した。セルロースのジカルボン酸化は、コハク酸やグルタル酸の無水物とセルロースの脱水縮合反応であり、反応触媒として水酸化カリウム、水酸化ナトリウムに加えて、酢酸ナトリウムを用いた。触媒量のジカルボン酸化率への影響を検討したところ、添加する塩基触媒は、セルロース量の1.26倍以上必要であることが分かった。セルロース原料としては、事前にアルカリ水溶液中で原料セルロースを処理してアルカリセルロース化することによって、反応率が1.1倍高くなった。通常の微小繊維状セルロースよりも、老成処理したものの方が反応率が1.3倍高く、結晶セルロースを用いると1.4倍高くなることが分かった。以上のようにアルカリ触媒の添加量によってジカルボン酸化率の異なるセルロースを合成し、ラインナップ化することができた。ジカルボン酸無水物としてグルタル酸無水物を用いることによって、鎖長の異なる誘導体もラインナップ化を達成することができた。 目標2として、「ジカルボン酸化セルロース水分散体の調製と特性評価」を挙げており、原料として老成セルロース、または結晶セルロースを用いて合成したジカルボン酸化セルロースは、pH7以上の水に溶解させることが可能であることが分かり、球状粒子化するにのに適していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として、「ジカルボン酸化セルロースのラインナップ化合成」を挙げている。原料であるセルロースの種類が異なる、すなわち分子量が異なるセルロースであり、ジカルボン酸化率の異なるジカルボン酸化セルロースを、原料の老成処理やアルカリ処理などの前処理条件や、エステル化反応の触媒の種類や量を変えることによってラインナップ合成することができた。さらに最適化した条件下において、鎖長が異なるグルタル酸を導入したセルロース誘導体も合成しており、目標を達成することができた。 難容性、難分散性であるセルロースのエステル化反応は困難であり、ジカルボン酸化率は低いと予想していたが、反応条件を最適化することによって、特殊な溶媒を用いずに、ほぼ100%の導入率のジカルボン酸化セルロースを合成することができた。 その他の目標として、「ジカルボン酸化セルロース水分散体の調製と特性評価」を挙げているが、誘導体化してもセルロースの分散化は困難であることが予想されていた。しかし、原料として用いるセルロースとして、老成セルロース、または結晶セルロースを用いることによって、予想を超える、pH7の水に溶けるセルロース誘導体を合成することができた。 pHの変化によってジカルボン酸化セルロースの分散・溶解性は変化し、ジカルンボン酸化率の高いセルロースにおいては、溶解と沈殿はpH変化によって可逆的であるということを見出すことができた。この現象はpH10以上の高pH領域でも起こり、高pH条件下でも誘導体は安定であることが分かった。 以上のように、原料となるセルロースの分子量などの特性と前処理条件、反応時の塩基触媒の種類と量を最適化することによって、カルボキシ基量や分子量が異なる誘導体をラインナップ化するだけでなく、完全にジカルボン酸化され、中性の水に溶かすことが可能であるセルロース誘導体を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度の目標として、引き続き、「ジカルボン酸化セルロース水分散体の調製と特性評価」を挙げており、これまでに合成したジカルボン酸化セルロースを水に溶解させ、ジカルボン酸を離脱させる条件をpHや温度条件を最適化することによって調査する。 さらに、「セルロースマイクロビーズの調製」を目標として挙げており、ビスコースを用いてセルロースマイクロ球状粒子を調製する方法を参考にして、これまでに調製したジカルボン酸化セルロース誘導体の水溶液を、ポリアクリル酸ナトリウムの水溶液に添加することによって液滴化し、ジカルボン酸をセルロースから離脱させることによって球状粒子を調製することを試みる。得られた球状粒子の形状や粒径を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡、動的光散乱測定装置やフロー粒子画像分析装置を用いることによって調査する。ビーズ状の再生セルロースが得られない場合、アニオン性ポリマー溶液の種類や配合比、および、ジカルボン酸誘導体の種類や濃度を検討し、形状や粒径に及ぼす影響を系統的に調査する。これらの調査に基づいて調製条件の最適化を行い、代替プラスチックマイクロビーズとして用いることができるセルロースマイクロ球状粒子の開発を目標として研究を推進する。
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Causes of Carryover |
セルロースのジカルボン酸化率が高くなっても、当初はセルロースが完全溶解することは無く、分散体が得られると予想していたが、研究の進捗に伴い、セルロース原料の選択やジカルボン酸化法の最適化によって中性の水に溶けるセルロースを得られ、高pH環境下でもセルロース誘導体が安定であるという知見が得られたことから、その知見を使用し十分な研究成果を得るために、当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより、その調整に予想外の日数をようしたため年度内に完了することが困難となった。繰越した予算は、次年度にセルロース誘導体の特性評価や、セルロース球状粒子の形態観察および特性評価に使用する器具や薬品類の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)