2023 Fiscal Year Research-status Report
Control of Hydrogen Incorporation into Metals and Synthesis of Superstoichiometric Hydrides by Electrochemical Reaction
Project/Area Number |
22K04763
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (10347528)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | めっき / 金属水素化物 / 電気化学反応 / 水素侵入 / 水素熱脱離スペクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には、①めっきにおける水素侵入の制御、および②超化学量論的水素化物の電気化学合成とキャラクタリゼーションの二つの研究目的がある。 研究目的①では、無電解銅めっき膜中に共析した水素の存在状態を明らかにするとともに、添加剤による水素の共析量の減少と存在状態の変化、および膜構造の変化について解析した。無電解銅めっきに用いられているロッシェル塩浴とEDTA浴のいずれにおいても添加剤を用いない場合には、銅めっき膜中に共析した水素は格子間水素、空孔-水素クラスター、およびナノボイド中の分子状水素として存在する。ロッシェル塩浴ではNi2+イオンの添加によって格子間水素が存在しなくなり、それにより格子膨張による圧縮応力が発生しなくなった。EDTA浴ではビピリジルの添加によって銅めっき膜中に水素はほとんど共析しなくなったが、結晶粒が微細化されることが分かった。電解Pdめっき膜については、水素の存在状態への浴温の影響を調べ、5℃の低温では電流効率が低下して格子間水素が大幅に増加することがわかった。電解Niめっき膜については、電気化学的水素透過法による膜中の水素透過量の測定とともに、水素熱脱離スペクトルによる膜中水素の測定も行い、Ni膜中の水素共析に及ぼすめっき浴の組成とpH、添加剤、および電流密度の影響を調査した。 研究目的②では、高圧力下でPd箔に電解チャージを行って高濃度水素化物PdHxを合成した後、電解めっきによってZnまたはAuを被覆して水素脱離を防ぐことを検討した。その結果、Znめっきで被覆することによって常圧に戻してから室温で1週間放置してもPdHxの水素濃度はほとんど減少しないことが確認された。従って、高圧力下の電解チャージによる高濃度水素化物の合成が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的①の無電解銅めっきについては、ロッシェル塩浴とEDTA浴において添加剤よる水素共析の抑制効果が認められたため、これらの研究成果を国際会議と国内学会でそれぞれ2件ずつ発表した。これらの発表内容をまとめた論文を現在執筆している。また、銅めっき膜のナノボイド中の分子状水素の量と圧力を調べるため、アルキメデス法による膜の密度測定とX線小角散乱によるナノボイドの孔径分布測定を行ったが、いずれもバラツキが大きく正確な値を得ることはできなかった。電解Pdめっきについては、日本金属学会誌に昨年掲載された論文を英文化してMater. Trans.誌に掲載された。また、Pdめっきの浴温による水素の存在状態の変化について調べた結果を速報論文として表面技術誌に投稿し、令和6年5月号に掲載された。電解Niめっき膜中の水素の侵入については、これまでの結果をまとめて学会で発表した。無電解Ni-PめっきによるAl合金中への水素の侵入については、研究を担当する学生の卒業により現在研究は進んでいないが、これまでの成果をまとめた論文を執筆している。 研究目的②では、昨年8月頃に漸く高圧容器の修理が終わり、高圧力下の電解チャージで合成したPdHxを電解ZnおよびAuめっきで被覆して水素脱離を抑制することを検討した。ZnめっきではPdHxからの水素脱離を抑制できたため、この成果について論文を執筆している。しかし、この方法ではこれまでに高水素濃度のPdHxは得られていないため、予めPd箔をAuめっきで被覆してから電解チャージを行うことを現在検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的①の無電解銅めっきについては、めっき浴中へのNiイオンおよびビピリジンの添加によって水素の共析量は減少したが、銅めっき膜中へのNiおよび炭素の共析によって結晶粒が微細化した。これは銅配線の抵抗率の増加につながるため、銅めっき膜中に共析せず、結晶粒径が小さくならない新たな添加剤を検討する。Pd電析膜については1300 Kまでの高温までの水素熱脱離スペクトルを測定し、ナノボイド中に存在する多量の分子状水素を定量する。白金電析膜中の水素の存在状態についても同様に水素の存在状態を解析し、Pd膜と比較する。電解Niめっきについては、Ni膜中への水素の侵入を低減する電析条件と添加剤を探索し、これらの機構について電気化学的に解析する。無電解Ni-Pめっきについても電気化学的水素透過法を行って、Al合金中への水素侵入を解析する。 研究目的②については、高圧力下での電解チャージによって高水素濃度のPdHxを合成するための条件を確立する。得られたPdHx(x = 1~2)について、固体NMRと中性子回折による水素の存在状態解析、および超伝導特性の評価を行い、両者の関係を解析する。また、高圧力下でPdHxの抵抗率測定を行うための電極等を高圧力電解セル内に組み込んで、電解チャージ時の抵抗率の変化を調べる。 本研究課題の最終年度となるため、得られた研究成果を次々と論文化し、積極的に学会で発表する。
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