2022 Fiscal Year Research-status Report
介在物の物性と縮流を利用した注湯プロセスにおける介在物の直接検知
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22K04788
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原田 寛 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90373951)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 介在物 / 濡れ性 / 縮流 / 密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、注入プロセス中の縮流部近傍に気/液界面を形成し、その界面に介在物を集積・露出させることで注入流中の介在物品位の直接評価を行う方法を提供することを目的としている。これは溶鋼と介在物の濡れ性が悪いことに着目したものであり、介在物を模擬する粒子の物性を変化できる水モデル実験と数値解析により、気/液界面に介在物を露出・集積するための具体的な条件の検討を行っている。まず、ノズル内注入流を模擬する水モデル実験装置を作成し、ストッパー(流量調整弁)の中心軸に内視鏡を設置し、ストッパーとノズル間の縮流下での模擬介在物粒子の挙動を観察した。その際、粒子表面に親水剤や撥水剤を塗布し水との接触角を変化させた結果、濡れ性によって模擬介在物の挙動が大きく変化することを知見した。特に撥水剤を塗布した条件で粒子間、粒子とノズル内壁間に作用する凝集力に起因すると推定される特異な挙動が観察された。次に、模擬介在物の動的挙動を高速かつ高解像度で捉えるため、ハイスピードマイクロスコープとレーザースリット光を導入し、ストッパー先端に気/液界面を形成する方法について検討した。その結果、ストッパー先端部への空気吹込み方法の工夫により、ストッパー前面に気/液界面を形成でき、かつその界面下に粒径100~200μmの比較的微細な気泡群を生成できることがわかった。現在、模擬介在物表面の接触角をアルミナと溶鋼の接触角と同等まで高めた条件をつくり、ノズル内に生成した気/液界面に模擬介在物を集積・露出する条件の検討を継続して行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、介在物の物性(濡れ性と密度)と注入流の特徴(縮流)に着目したもので、注入プロセス中に気/液界面を形成し、その気/液界面に介在物を露出・集積させる、具体的な条件について、水モデル実験ならびに数値解析を行い検討する。令和3年度から本研究の事前検討に着手した。まず、ノズル内注入流を模擬する水モデル実験装置を作成した。本実験装置ではストッパーを用いて注入流量を制御するが、そのストッパーの中心軸に内視鏡を設置し、ストッパーとノズル間の縮流下での介在物挙動を観察した。模擬介在物としてスチレン-ジビニルベンゼン系合成吸着剤粒子を用いその粒子表面に親水剤や撥水剤を塗布し水との接触角を変化させた。その結果、濡れ性によって模擬介在物の挙動が大きく変化した。親水剤を塗布した条件では粒子はノズル内面に沿って流動するのに対して、撥水剤を塗布した条件では、まるで空気中に剛体球を投げ入れたように内壁と衝突し流動方向を変化させながら流入することを知見した。この撥水剤を塗布した場合の粒子の挙動について、粒子間、粒子とノズル内壁間に作用する凝集力に起因するものと推定された。令和4年度において、模擬介在物の動的挙動を高速かつ高解像度で捉えるため、ハイスピードマイクロスコープとレーザースリット光を導入した。これにより、ノズル内での模擬介在物の挙動をノズル内あるいはノズル側面からの観察が可能となり、ストッパー先端に気/液界面を形成する方法について検討した。ストッパー先端部への空気吹込み方法の工夫により、ストッパー前面に気/液界面とその界面下に粒径100~200μmの比較的微細な気泡群を併せて生成できることがわかった。現在、模擬介在物表面の接触角をアルミナと溶鋼の接触角(140°)と同等まで高めた条件をつくり、ノズル内に生成した気/液界面に模擬介在物を露出・集積することができないか検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル実験については、ストッパー前面に気/液界面を形成できるようになったことを受け、(1)模擬介在物の密度<流体の密度の条件において、模擬介在物粒子の表面にアクリル系撥水剤を塗布し溶鋼/アルミナ間の接触角と同様な接触角まで高めた条件で実験を行い、気/液界面に模擬介在物を集積・露出する条件を明らかにする。なお、本条件においては、気液界面下に微細気泡群が生成しており、模擬介在物が気泡に捕捉されることが期待されるため、(2)模擬介在物の密度>流体の密度の条件においても同様な実験を行う。さらに、気泡の微細化を図り、より効率的に気/液界面に模擬介在物を集積・露出する可能性について検討を行う。上記検討により、溶鋼とアルミニウム溶湯の注湯プロセスへの適用可能性を明らかにする。数値解析については、令和5年度から検討に着手し、モデル実験で得られた現象を数値解析にて再現することを試みる。解析には汎用の流体解析ソフトCOMSOL-Multiphysicsを用い、流体中の介在物の挙動はEuler-Lagrangeアプローチにて取扱う。具体的にはBBOT式(Basset-Boussinesq-Oseen-Tchenの式)を解き、ストッパー前面の気/液界面に到達する条件を検討する。粒子間には接触角によって変化する凝集力が作用することが明らかになっており、モデル実験結果を踏まえ定式化した凝集力を加えて検討を行う。気泡についても同様のアプローチにて検討するが、気泡径、体積率によって取扱いが異なるため、Euler-Eulerアプローチも念頭に入れて検討を行う予定である。 最終年度の令和6年度においては、数値解析に注力する予定である。まずはモデル実験結果を再現したのちに、溶鋼、アルミニウム溶湯、それぞれの代表的な注湯条件で解析を行い、本研究の実現可能性について総括するとともに次ステップの展開について検討する。
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Causes of Carryover |
当初、令和4年度において学会発表1件と論文投稿1報を計画していた。学会発表については計画通り実施できたが、論文については現在作成中で令和4年度中の投稿に至らなかった。そのため、令和5年度に令和4年度の成果と令和5年度の成果の2件の投稿を計画している。
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