2023 Fiscal Year Research-status Report
レアアースの効率的なリサイクルを実現する高分子吸着材の開発
Project/Area Number |
22K04795
|
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
保科 宏行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (60446416)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬古 典明 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (10354953)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 金属吸着材 / 資源回収 / 不織布基材 / レアアース / 放射線加工 / 量子ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射線加工技術を駆使して、ポリエチレン製不織布基材に、レアアースに対して親和性が高い低分子の金属抽出剤と、サイズ認識により金属の分離が可能なネットワーク構造を効果的に導入し、対象とする金属を選択的に捕捉可能な高分子吸着材を開発する事を目的とする。 昨年度の研究では、抽出剤及びネットワーク構造の導入に必要な架橋剤の選定を行うとともに、放射線架橋を行う際の線量や抽出剤と架橋剤の混合比等について検討した結果、レアアースに高い親和性を持つ2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルに対して、架橋剤のトリアリルイソシアヌレートを50 wt%混合し、線量30 kGyの条件で合成した吸着材が、ジスプロシウム(Dy)に対して高い吸着量を示す事を確認できた。 本年度は、吸着した金属の最適な溶離条件の検討及び吸着材の耐久性評価を行った。溶離条件の最適化では、溶離液の種類やpH等を検討し、1 mol/L塩酸に吸着材を2時間浸漬させる事で98%以上の金属を溶離する事に成功した。吸着材の耐久性評価では、Dyとネオジム(Nd)がそれぞれ100 mg/Lの濃度で共存する混合溶液(pH2)に吸着材を浸漬させてDy、Ndを吸着させたのち、1 mol/L塩酸を用いて溶離を行った。次いで、同条件にてDy、Ndの再吸着試験を行い、吸着・溶離を10回繰り返すことで耐久性を評価した。1回目と10回目の吸着試験におけるDyの吸着量は吸着材1gあたりそれぞれ11.4、11.7 mgであった事から、吸着材の繰り返し使用においても吸着性能が低下しない事が明らかになった。また、10回目の吸着試験におけるNdの吸着量は僅か1.6 mg/g-吸着材であった事から、Dyに対して高い吸着選択性を有する事も確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、繰り返し吸着試験による耐久性評価を行い、架橋構造を効果的に導入する事で吸着基を安定した状態で高分子基材に固定できるため、再吸着試験においても高い吸着性能を保持できる事を実証した。また、吸着した金属の溶離条件を最適化できた事から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、吸着材の合成において、対象とする金属を予め吸着基に結合させた状態で放射線架橋を行う事で、金属のサイズに合わせた網目構造を吸着材に導入する予定である。また、網目構造の導入密度と吸着選択性の相関性を明らかにする事で、吸着選択性の向上を図る。
|
Causes of Carryover |
既に所有していた試薬や器具等の消耗品類を有効活用する事で、当初予定していた予算から主に物品費を減額できたため、次年度使用額が生じた。金属抽出剤やグラフト重合用モノマー等の試薬類の他、吸着材の性能評価に用いる器具等を購入する。また、研究成果を学会等で発表するための旅費等に使用する予定である。
|