2022 Fiscal Year Research-status Report
核形成とガス吸収挙動を制御した瞬間ハイドレート形成法におけるCO2ガス分離機構
Project/Area Number |
22K04800
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小松 博幸 新潟大学, 自然科学系, 助教 (30738076)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | ハイドレートスラリー / マイクロナノバブル / 物質移動現象 / ガス吸収 / 結晶成長 / 断熱膨張 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではセミクラスレートハイドレート(SCH)スラリーへのガス吸収機構がガス種によって異なることを明らかにし,短時間でのガス分離法を開発する。具体的にはマイクロナノバブル(MNB)と断熱膨張を組み合わせた瞬間SCH形成法を検討する。その特殊状況下におけるガス吸収機構を解明し,大幅なCO2分離能の向上を目指す。 令和4年度では瞬間的にSCH形成させるための装置開発と高分子分散剤添加がSCHスラリーの流動性やCO2吸収挙動に及ぼす影響を調査した。装置開発では断熱膨張の影響を大きくさせるために,当初予定していた1 MPaより高圧システムに改良する方法を検討した。インライン型MNB発生器の耐圧は1 MPaであるが,高圧ポンプの上流に設置することで1 MPa以上圧力がかからないようにした。その際,バブルを含む流体を輸送可能なハイドラセルポンプを採用した。圧力調整用のダイヤフラムバルブは高圧に対応していないため,グローブタイプのバルブに変更した。これらにより製作した装置でMNBを含む流体が流動可能であることを確認した。 瞬間SCH形成法の吸収機構との違いを明らかにするために,高分子分散剤であるポリビニルアルコール (PVA)がSCHスラリーの性状に及ぼす影響を評価した。ループ管流動装置により,CO2加圧はSCHスラリーの固形分率を増大させ,それに伴い凝集性が増大することを確認した。PVA添加条件では固形分率が増大しても,その凝集性は増大しないことが確認された。気泡塔型装置における吸収挙動では,PVAにより吸収量が低下したが、凝集体が多い高固形分率の条件では吸収量が増大した。これより,PVA被覆はSCH凝集を抑制することでCO2吸収を促進させるが,CO2のSCHへの物質移動を阻害させることが確認され,SCHが凝集する条件以外では適切でないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
流体を循環流動させた際,3相混相流体になる可能性がある。それを高圧条件に保ちながら流動させるシステムの構築や,そのための物品選定に時間を有した。ハイドラセルポンプの納品に時間がかかったこともあり,断熱膨張を利用したハイドレートの瞬間形成実験は行えていない。そのため,現在までの進捗状況はやや遅れていると評価した。 一方,SCHスラリーへのCO2吸収量を増大させる別の方法として検討しているPVAの添加効果については検証を行った。これよりSCHの凝集を抑え,時間をかけた場合のCO2吸収機構は明らかになった。この結果と今後行う瞬間SCH形成法での結果を比較することで,本研究で調査する瞬間SCH形成時のCO2吸収機構の特殊性について検討することが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和5年度はまず,断熱膨張を利用したハイドレートの瞬間形成条件に付いて検討する。吐出前後の圧力差(CO2ガスを利用)や温度,SCHを形成する塩の濃度,吐出先の環境(気相,液相)を操作因子として氷の形成を抑えつつ,SCHスラリーが形成する条件を明らかにする。その際,CO2の吸収量を測定し,ガス吸収挙動を調査する。 その後,同様の条件にてN2ガスを用いてSCHを瞬間形成させ,CO2ガスを用いた場合のガス吸収挙動との違いを明らかにする。また,令和4年度と同様に気泡塔型ガス吸収装置を用いて,N2の吸収実験を行う。これらの結果を用いて,瞬間SCH形成時のガス吸収機構を明らかにし,ガス分離性能について仮説を立てる。ガス分離についての研究は令和6年度に実施する。
|