2022 Fiscal Year Research-status Report
曳糸性を示す複雑流体の特性解明とその制御手法に関する研究
Project/Area Number |
22K04805
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
貝出 絢 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (50773074)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 糸曳き / 粒子沈降防止 / 粘弾性 / レオロジー / スラリー / 分散系 / 複雑流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複雑流体に分類される粘弾性流体もしくは粘弾性固体について、糸曳きの発現の有無、さらにはその制御手法について明らかにすることを目的としたものである。これは、ある流体が発現する、わずかmmオーダーの糸曳きが粒子の沈降防止に役立つ可能性があると考えるもので、糸曳きの挙動には、少なくとも2つのパターンが観察された。本研究では、オイル増粘・ゲル化剤を添加して調製した複雑流体が発現しうる糸曳きの特性を明らかにし、工業的に曳糸性を制御するために有用な知見を得ることを目標としている。対象とする系は申請者のグループが開発した化合物であり、その分子構造を系統的に変化させることで、基本骨格や側鎖に関する影響はもちろん、溶媒が糸曳きにもたらす効果について詳細な検討が可能になる。 溶媒としてドデカン、イソステアリン酸イソステアリル、他2種の油類に低分子オイル増粘・ゲル化剤:ピロメリッド酸テトラカルボキサミド(PMDA-R)を溶解させたものを試料とした。この化合物は、ベンゼン環の周囲に4つのアミド基を有しており、その末端にアルキル基が配位している。4つの側鎖のうち、結晶性の異なる2種類のアルキル基を導入することで、溶解性およびレオロジー特性を変えることができる。最大で1wt%の化合物を溶解させて調製した試料に対して、レオロジー特性(平衡流動特性、動的粘弾性)を測定し、自作の曳糸性測定装置によって、糸曳きを評価した。これにより、糸曳きのパターンを粘弾性と関連付けて整理した。さらに、特定の油中での化合物が形成する内部構造と化合物の結晶性を関連付けて考察した。調製する試料だけでは、純粘性流体に関するデータが取得できないため、水あめをモデルとして利用しデータを得た。さらに、糸曳きのパターンをより詳細に理解するために、規格化することで対応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度の後期から新たに導入した装置で測定を始める予定であったが、装置の納入が大幅に遅れた(2022年12月頃に納品された)。また、購入したものだけでは、不十分(必要な備品が不足している)ことが新たにわかり、販売元の方に当方の設備を実際に見ていただき、対応していただく必要がある状況である。このため、現在、その装置を用いた試料の測定に着手できていない。 2023年度に参加する学会では、販売元に会う機会があるため、事情を説明し、少しでも早いうちに、測定が始められる状況を作りたいと考えている。 現在のところ、測定するための試料調製には大きな問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
納期が遅れており、この研究で測定したい物性がなにも取得できていないため、これまで取得したデータの解析を中心に行っている状況である。これにより、新たな知見をまとめることができそうである。 2023年度中には、試料の偏光測定をして、どのような結果が得られるか、感覚をつかみ、2022年度より得られた知見との関連づけを行う予定である。
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