2023 Fiscal Year Research-status Report
光制御活性酸素負荷による間葉系幹細胞の運命決定技術の創製
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22K04847
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
原 正之 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50344172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 英樹 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (30450894)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 活性酸素種 / 光増感色素 / 細胞分化 / ヘマトポルフィリン / 再生医療 / 組織工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高レベルの活性酸素種(ROS)は、一般にDNA損傷などを介して細胞周期を停止させ、細胞傷害性を示す場合が多いが、低レベルのROSは、幹細胞などの分化において情報伝達シグナルとして作用する例も報告されている。この様な問題について明らかにするため、EDC/NHSを用いて光増感色素の一種hematoporphyrin(HP)を表面に化学的に固定化したガラス基板(HP基板)を作製して、可視光照射により活性酸素種(ROS)が発生する事を確認した。このHP基板表面から生じるROSの微弱な酸化ストレス刺激によって、分化誘導因子の添加なしに間葉系幹細胞に骨分化が誘導されるか否かを検討した。ラット骨髄由来の間葉系幹細胞を、HP基板を底面としたチャンバー内に播種し、10%ウシ胎仔血清と抗生物質を含むMEM培地で培養した。一晩培養した後、電子制御によりLED光を照射した。細胞膜過酸化脂質検出薬Liperfluoを使用した蛍光顕微鏡観察により、細胞膜過酸化脂質の増加が確認された。また、細胞内ROS検出試薬CM-H2DCFDAを使用した蛍光顕微鏡観察によって、光照射1時間後から細胞内のROSの発生が確認された。2週間の培養後、未修飾の基板上で培養した細胞では骨分化は確認されなかったが、HP基板上で培養した細胞は光照射の有無に関わらず骨芽細胞への分化、骨基質の形成を示すnodule様の構造が観察され、Alizarin Red Sによる染色が確認できた。さらに、細胞膜透過性で過酸化水素消去能を持つPEG-catalaseを事前に培地に添加することによって、骨芽細胞への分化は抑制された。以上の実験結果などから、HP基板による間葉系幹細胞の骨芽細胞への分化は、光増感色素から発生したROS刺激に応答して、2次的に細胞内で発生した過酸化水素シグナルを介して生じたと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては概ね順調に進展していると考えているが、MSCの細胞分化能に与える活性酸素種(ROS)の影響評価については、実験条件の変動が結果の変動に繋がり易いので、より慎重に確認を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本研究の最終年度に当たるので、ROSの細胞への刺激負荷が、MSCの分化能に与える影響を短期的及び長期的に比較評価して結果を確認したいと考えている。
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Causes of Carryover |
実験計画とその進捗に大きな変更は無いが、実験に用いる一部の試薬や器具などの購入に関わる支払いが、次年度購入・支払いになったため、2023年度執行予定総額の7.89%を2024年度に執行予定とした。
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