2023 Fiscal Year Research-status Report
弱い分子間水素結合を利用して構築する多孔質構造体の構造と機能の解明
Project/Area Number |
22K04854
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
太田 俊 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (20733132)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 水素結合 / 揮発性有機化合物 / 吸着 / 水耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子を水素結合により自己集合させた多孔質構造体をHOFと呼ぶ。本研究では、種々の弱い水素結合を利用して新規HOFを構築し、その構造と機能との関係を明らかにすることを主目的としている。研究2年目となる2023年度の主要な成果として、あるベンゾイミダゾール系有機化合物を基盤とするHOFが、極性のある揮発性有機化合物を吸着できることを見出した点が挙げられる。単結晶X線構造解析により、この吸着が、HOF骨格の形成に関わる弱い分子間水素結合(N-H・・・π相互作用)の切断と、ゲスト分子との新たな水素結合の形成により起こることを明らかにした。この成果は、研究代表者の「HOF構築に弱い水素結合を利用することで柔軟性高いHOFが得られる」という提案を支持するものであり、柔軟なHOF構築に用いることができる弱い水素結合の種類を増やした点で意義がある。加えて、このHOFは高湿度条件下においても揮発性有機化合物吸着機能を示すことが明らかとなった。実際の有機溶剤を取り扱う工場は高湿度なことが多いため、高湿度条件でも機能する吸着材料が求められている。その観点でみると本成果は、高湿度条件で有機溶剤の蒸気を吸着できる材料の設計指針を明らかにした点でも意義がある。この高湿度条件でも機能するHOFに関する成果について、査読付英語学術論文としてまとめ、発表した。さらに本年度は、昨年度見出したニッケル錯体を基盤とするHOFによる色変化挙動についても、査読付英語学術論文としてまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」欄に記載した通り、本年度論文発表を行ったHOFは、高湿度条件下でも機能する。この特徴は産業界のニーズともよく合致しているため、本成果は実際の現場からの需要に応えられる材料の設計指針を示すものと捉えられる。この成果は、研究開始当初、全く想定していなかったものであり、本研究の価値を大きく高める。よって、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見出した高湿度条件下でも機能するHOFに関して得た知見を起点に、より材料として適切なHOFの開発を進める。また、論文発表には至っていないものの、これまでとは異なる弱い水素結合が、柔軟なHOFを構築できることも見出していることから、その機能解明と論文化へ向けた取り組みも行う。
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Causes of Carryover |
当初想定していた旅費と物品費を所属機関の校費等、別財源から捻出でき、経費の使用を節約できたことが次年度使用額が生じた主な理由である。残額は、次年度の物品購入に使用する。
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Research Products
(4 results)