2022 Fiscal Year Research-status Report
固有ジョセフソン効果の広領域位相同期と電磁波放射構造
Project/Area Number |
22K04861
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
南 英俊 筑波大学, 数理物質系, 講師 (00190702)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ジョセフソン効果 / テラヘルツ波 / 高温超伝導 / 固有ジョセフソン接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+dはジョセフソントンネル接合が積層した構造をもつ層状物質であり、ジョセフソン効果を基本原理とする単色テラヘルツ波の放射が起こる。本研究は、この結晶の大規模なアレイ構造やフォトニック結晶の概念を応用することで、結晶内で生じる超伝導電流、常伝導電流と変位電流の集団励起であるジョセフソンプラズマの、広い領域でのコヒーレンスの実現を目指す。それによって、放射される単色テラヘルツ波を増強することを目的とする。 今年度は、これまでで最大の24個までのメサ型素子からなるアレイ素子を作製することに成功し、さらなる大型化の足掛かりを得た。素子数が多くなると問題となるジュール発熱対策として、この研究分野では初めてとなる、パルス電圧でバイアスする測定システムを構築した。発振素子の基本特性である周波数スペクトルと放射分布をパルスバイアス下で測定できるようになった。 14個および24個のメサ型素子からなるアレイ素子において、要素であるメサ型素子が放射するテラヘルツ波間の周波数引き込み現象(単色化)を、新たに構築した周波数スペクトル測定システムを使って観測することに成功した。また、当初想定していなかったが、パルスバイアスによってサブテラヘルツ~テラヘルツ帯で周波数掃引が可能であることが見いだされた。パルスバイアス研究以外では、これまで我々の素子で観測されていた高い放射指向性の解明に向けて精力的に研究を行った。その結果、排熱のためにメサ構造に接触させていたアルミナ板またはサファイア板が、誘電体共振器アンテナとして動作していることを、放射分布測定実験とコンピューターシミュレーションによる研究によって突き止めた。 上記の成果は応用物理学会、低温物理国際会議などで発表し、2件のプロシーディング論文を発表した。周波数掃引については特許出願を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にはなかったパルスバイアスでの実験研究を始めるなど研究内容に変更があったが、本研究課題の研究がおおむね順調に進んでいる上に、当初想定していなかった発見・発明もあった。パルスバイアス技術は、ジュール発熱対策として、アレイ素子のさらなる大型化、フォトニック結晶を応用する大面積化では不可欠となる技術である。 初めて20個を超えるメサ型素子からなるアレイ素子の作製に成功し、位相同期を起こす条件について貴重な知見が得られた。したがって、当初計画した研究はおおむね順調に進んでいると判断する。加えて、パルスバイアスを使った研究によって、サブテラヘルツ~テラヘルツ帯での周波数掃引ができるという当初想定していなかった発見・発明があった。また、放射分布測定実験とコンピューターシミュレーションによって、高い放射指向性を定性的には解明することができた。したがって、総合的には「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を進めるために、実験研究面では、さらに大規模なアレイ素子の作製を行い、メサ型素子間の位相同期について理解を深めるとともに放射の高強度化を図る。また、フォトニック結晶構造を応用した素子の作製に着手し、これまでにない機構による結晶面方向のジョセフソンプラズマのコヒーレンスの可能性を調べる。本研究課題からは外れるが、本研究課題を行う中で発見した周波数掃引の特性向上に向けて、技術開発を強力に推進する。他の助成金を申請中であり、採択されれば実用化に向けた研究も推進する。今年度得られた、周波数掃引、位相同期、高指向性の研究成果を論文としてまとめ発表する。
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Causes of Carryover |
放射指向性の実験が進展しその起源についての考察が深まったため、高い放射指向性の解明を加速するべく、当初購入予定だったワークステーションとコンピューターシミュレーションソフトは、前倒しして前年度採択された民間助成金で購入した。当初購入予定だった回転ステージは、放射指向性が総じて良いことが判明したため、現状の測定システムで良いと判断し購入を取りやめた。代えて、素子の大型化によるジュール発熱問題に備えるため、パルスバイアスとパルス計測のための増幅器およびデジタルオシロスコープを購入した。高い放射指向性の解明のため購入したワークステーションのメモリーの増設と、コンピューターシミュレーションソフトの保守更新を行った。このような大きな変更があったため次年度使用が生じた。 繰越金については、デジタルオシロスコープとコンピューター間のデータ転送にかかる時間が計測時間の律速段階となっているので、信号取得・信号処理装置の購入に充てる予定である。
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[Journal Article] Approaches to high performance terahertz-waves emitting devices utilizing single crystals of high temperature superconductor Bi2Sr2CaCu2O8+δ2023
Author(s)
T. Kashiwagi, G. Kuwano, S. Nakagawa, M. Nakayama, J. Kim, K. Nagayama, T. Yuhara, T. Yamaguchi, Y. Saito, S. Suzuki, S. Yamada, R. Kikuchi, M. Tsujimoto, H. Minami, K. Kadowaki
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Journal Title
IEICE TRANS. ELECTRON.
Volume: E106-C
Pages: 281-288
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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