2022 Fiscal Year Research-status Report
Theory for nanographene device design by quantum many-body effects
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22K04864
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
草部 浩一 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (10262164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 直樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (20815790)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グラフェン / 量子コンピュータ / 量子スピン系 / NMR / エンタングルド状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の本研究により、量子演算素子を提供しうるナノグラフェン構造を、局在ゼロモードを適切に配置することにより実現できることを例示する研究実績を得ることができた。 具体的には、まずpoly-PTMの水素化により局在ゼロモードが発生し、量子スピン系が与えられる。その結果プロトンスピンを配置した測定型量子計算素子を得ることが出来る。この設計法で与えた1次元分子系等を用いて、密度汎関数法による構造最適化示計算により、設計通りの局在ゼロモード配置が得られることを確認しながら、同時にNMR化学シフトを理論計算から見積もって、ゼロモードを与えている吸着水素とボンド終端水素を明瞭に区分した水素NMRが得られることを結論した。グラフェン分子の合成方法を応用して、Poly-PTMの合成手順を検討した。1次元鎖系はCyclohexa[cd]perylene (CP) を基本骨格として分子設計が可能である。 さらに、2次元S=3/2反強磁性ハイゼンベルグ系の設計方法を、具体的なポリマー構造の物質設計を行って提供した。密度汎関数法計算により、構造異性体間のエネルギー評価を行って水素吸着位置の制御が可能であることを確認し、設計通りの局在ゼロモード配置が得られることを含め、1次元鎖、2次元ネットワークが安定に提供できることを確認した。これらの結果を日本物理学会において情報公開した。 電子スピンから構成される量子スピン系としての相互作用エネルギーを、密度汎関数法に基づいて考察し、モデル設計した系の中から量子スピン系として望ましい構造をさらに選別できることを確認し、情報公開を行った。設計した水素化poly-PTM系は、Haldane系とプロトンスピンが弱い超微細相互作用で弱く結合した量子スピン系を与える。よって量子測定解析を可能と出来ることが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノグラフェン分子、ナノグラフェンポリマーを用いた、測定型量子演算素子を与える物質解を提供することが、本研究の目的である。この測定型量子演算素子として機能しうる、1次元ハイゼンベルグ鎖を与えうる水素化ナノグラフェン分子について、構造の安定性を確認すると同時に、水素NMRシグナルの特徴をGI-PAW法を用いた理論計算を適用して決定した。その結果、局在ゼロモードを与える電子と強く超微細相互作用を通して結合しうるプロトンスピンが、確かにオントップ吸着水素であることを確認した。同時に、水素NMRの化学シフトの理論値を求めることで、エンタングルド状態にある電子系の影響をこのオントップ吸着水素からのシグナルで分離して観測が可能であると考えられる数値を得た。これを日本物理学会等で発表した。 また、将来的には、1次元鎖で実現が困難なユニバーサル量子計算リソースを提供するため、エンタングルした2次元量子スピン系の設計が必要となる。このための出発点として、2次元量子ハイゼンベルグ系を与えうる構造を設計することに成功した。この新しい2次元量子ハイゼンベルグ系を与えるナノグラフェンポリマーは、適切にナノグラフェン分子を2重の結合を形成して、実現することが出来る。特に、量子スピン系の安定性に関わる局在ゼロモードの縮退度について、それを分子設計の観点から制御し、最適な構造を選び出すことができることを、今年度の研究から結論することが出来た。 量子スピン系の設計において、ユニバーサル量子計算素子を得るには、従来の荷電由来電子間相互作用起源による磁気的相互作用過程に加えて、電流由来電子間相互作用起源による相互作用過程が重要となる。その評価の基礎となる、スピン・電流回転相互作用の理論を、量子電磁力学に基づいて基礎づけることにも成功した。そこで、次年度以降に、磁性体の設計を進める素地が完成したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでの実績を元に、さらにユニバーサル量子計算リソース状態(URS)を与えるための物質設計と評価を進めていく。加えて、ナノグラフェン基板上の吸着分子構造の決定計算事例、グラフェン等の原子層物質を用いたデバイスの設計事例、構造決定の高速化計算手法、格子振動の決定計算などを実施してきた。これらの評価方法や設計技法を、ナノグラフェン量子多体効果デバイスの設計に適用する。 まず、2次元S=3/2反強磁性ハイゼンベルグ系の設計方法を提供して、URSを与える方法を検討する。密度汎関数法計算の結果から、繰り込み操作により有効量子スピン系を相互作用の評価結果も併せて提供するシミュレーションを実施する。 その結果をもとに、スピン緩和過程を量子ダイナミクスとしてシミュレーションする。散乱問題をシミュレーションして、量子過程を観測データとして取得する。ユニバーサル量子計算においては、量子過程から逆に素子構造を与える方法が必要となる。この逆問題を、機械学習の適用によって解決していく。逆写像を構成して、定めた量子過程が実現されるナノグラフェン素子構造を逆に決定する方法が実現可能であることを示していく。 また、当初研究計画通り、ナノグラフェン素子構造を担持する基盤表面との相互作用評価を行うため、ナノグラフェン分子・グラフェン間相互作用の精密力場解析を進めていく。ディスエンタングルメントを回避するために、スピン自由度と電流回転自由度間の相互作用過程を出来るだけ少なく、またその相互作用強度を小さくする物質設計を行って、孤立したナノグラフェン量子素子を実現するためのデバイス設計を進める。
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