2022 Fiscal Year Research-status Report
Molecular dynamics study of linear alkanes geometrically restricted in carbon nanospaces
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22K04866
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松田 和之 神奈川大学, 工学部, 教授 (60347268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 啓典 法政大学, 生命科学部, 教授 (10260027)
真庭 豊 神奈川大学, 付置研究所, 客員教授 (70173937)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / アルカン / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノメートルスケールの空間内で分子集団が示す振る舞いは、通常のバルク状態と異なることが知られている。単層カーボンナノチューブは1枚のグラフェンシートを円筒状に丸めた構造をしており、その内部に直径が数ナノメートル程度の原子レベルで一様な空洞をもっており、ナノ空洞内での分子集団の構造や挙動を研究するうえで有効な物質の1つである。本研究課題では直鎖状アルカンのダイナミクス、構造、相転移の特性がカーボンナノチューブ直径やアルカン鎖長にどのように依存するのかを、核磁気共鳴実験、x線回折実験、示差走査熱量測定、古典分子動力学シミュレーションにより調べている。本年度は、主に平均直径1.3nmの単層カーボンナノチューブ試料、および直鎖状アルカンとしてn-ヘキサンとn-デカンを用いた実験を行った。x線回折実験により、適切な熱処理を実施した単層カーボンナノチューブ試料ではn-ヘキサンとn-デカンがナノチューブ内部空洞に高い充填率で吸着されることを明らかにした。分子動力学シミュレーションからは、直径1.3nmの単層カーボンナノチューブ空洞内ではn-ヘキサンとn-デカンの凝集,凝縮構造が異なることがわかった。また、重水素化したn-デカンを吸着した単層カーボンナノチューブ試料について室温での重水素核の核磁気共鳴実験を行い、ナノチューブ内部空洞に吸着したn-デカンの並進運動が核磁気共鳴の時間スケールでは凍結していることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していたように、n-ヘキサンとn-デカンの2種類について、それらアルカンを吸着した単層カーボンナノチューブ試料を作製し、ナノチューブ内部空洞への吸着を確認するとともに、その構造や挙動についていくつかの新しい知見が得られた。また、これらの研究成果を第32回日本MRS年次大会にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、核磁気共鳴実験、X線回折実験、示差走査熱量測定、古典動力学シミュレーションにより単層カーボンナノチューブに吸着したアルカンの構造と挙動を調べる計画である。特に平均直径の異なるいくつかの種類の単層カーボンナノチューブ試料を用いた実験を行い、アルカンのナノチューブ内部空洞への吸着の有無、構造、挙動がチューブ直径にどのように依存するのかを調べる。
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Causes of Carryover |
分子動力学シミュレーションにより、単層カーボンナノチューブ内部空洞に吸着したヘキサンとデカンの挙動と構造を調べたところ、予想とは異なる興味深い知見が得られたため、計算機シミュレーションによる研究を優先的に実施した。その結果として、本年度に計上していた高純度カーボン試料や重水素化アルカン試料、また低温測定用の液体窒素など実験に必要な消耗品の使用量が当初の計画よりも少量となり、次年度への繰越金が生じた。繰越金は次年度以降にこれらの実験用消耗品として使用する計画である。
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