2022 Fiscal Year Research-status Report
バイポーラ電気化学の概念を応用した位置選択的グラフェン化学修飾法
Project/Area Number |
22K04868
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
沖本 治哉 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 助教 (20510168)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | グラフェン / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンは炭素原子の厚さをもつ2次元平面物質であり電子材料としての応用が可能である。不活性な表面を機能化するために表面の精密な化学修飾が重要である。特に非対称に化学修飾したグラフェン(ヤヌスグラフェン)は異なる機能面を併せ持つことで、特異な性質を発現する。このためには位置選択的化学修飾が必要である。そこで本研究では、バイポーラ電気化学の概念をグラフェンの化学修飾に応用し、グラフェン表面で電気化学的な酸化修飾と還元修飾を位置選択的に同時行なうことで、同一面ヤヌスグラフェンの合成法を確立することを目的とする。 令和4年度は装置のセットアップとグラフェンがバイポーラ電気化学雰囲気下でどのような挙動を示すかを確認した。アミンを使った反応では、主に陽極側において通常の電気化学反応と同様の酸化修飾反応を示した。また硫酸水溶液を用いた基本となる酸化反応においては、陰極側の端からグラフェンが位置選択的に酸化されることが分かった。さらに、グラフェン表面に金属微粒子をスパッタした状態で同様の酸化反応を行なうと、反応の怒らない陽極側においても酸化反応を示す知見を得られた。つまり金属微粒子を利用することでバイポーラ電気化学下でのグラフェンの化学修飾を活性化できることが分かった。また、水系での電気化学反応においては水の分解反応が邪魔になるため水の分解反応を抑制する必要がある。そのため、水系リチウムイオン電池などで使われる技術の1つである濃厚電解質溶液を用いる手法を導入し、水の分解電位を高電位側にシフトさせることができた。また、電位をスイッチさせることで水の分解電位を避けつつ還元反応と化学修飾的酸化反応を両立する手法も確立した。 以上のことから、本年度はバイポーラ電気化学装置の構築とグラフェンの酸化側において位置選択的な酸化反応が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りにバイポーラ電気化学修飾を行なう実験装置を構築した。また初期実験としてグラファイトに対しての表面化学反応(アミンによる修飾反応、金属微粒子を利用した酸化修飾反応)の促進効果を確認した。一方で、グラフェンが水の分解によって生じる気泡に起因する基板からの剥離を確認したが、濃厚電解液や電位スイッチングを応用することで解決可能であるという基礎的な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究計画通りに次の事を実施していく。 1.電気化学剥離法などで安価に作製した微小グラフェンに対するバイポーラ電気化学を用いた部分的化学修飾、2.酸化側修飾(アミン修飾)と共存可能な還元側化学修飾反応の選定とバイポーラ電気化学下でのグラフェンへの位置選択的化学修飾の検討、3.酸化を抑制した雰囲気下での酸化/還元同時修飾の検討、3.電位スイッチングを利用したグラフェン両端への金属化学修飾の検討。4.電位による化学修飾量や化学修飾範囲の制御の検討
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Causes of Carryover |
バイポーラ電気化学装置の構築に際して高出力電源の購入を見越していたが、基礎的な知見を得ることを優先し、既存の電源で補ったため、初年度のこの装置の購入を見送った。使用計画としては、装置の2号機を検討しているので、次年度に繰り越した予算は、新規に交流電源を購入することを計画している。
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Research Products
(4 results)